現在、Tambatitanis amicitiaeという学名がついているが、復元をスタートした当時はまだ「丹波竜」という通称で呼ばれていた。Tambatitanis amicitiaeは竜脚類の一種で、復元の結果導き出された全長は約15mほどである。竜脚類としては特別大きなものではないが、日本で発見された同じグループの種の中では屈指の保存状態である。
監修は兵庫県立人と自然の博物館の三枝春生主任研究員。三枝さんは本来、化石ゾウの研究者なのだが、丹波竜が兵庫県内で発見されたため、期せずして恐竜を研究することになってしまったという経緯がある。 最初に始めたのは、頭骨の復元である。およそ完全とは言い難いが、脳函(ブレインケース、脳の入る部分)と下顎の一部が保存されていた。脳函も下顎も幸運なことに、重要な部分が残されていた。脳函には頚椎へつながる関節があり、環椎(第一頚椎)も同時に発見されていた。下顎には最も後ろまでの歯槽が残されていて、どの位置まで歯が生えていたかが推測できる状態である。
とはいえ保存された部位は大きいとはいえない。それ以外の部分を同じグループに属すると考えられる別種などから推測するしかない。最初に渡されたこの図版から制作したラフが次のものである。
さらにこのラフをもとにペン画で仕上げていった。締め切りが迫ってきていたこともあり、少し急いで進めたのだが、それが結果的にさらに大きな労力をかけなければいけないことになってしまった。
茶色く色の付いている部分は発見されている部位。この図版を三枝さんに送ったところ、しばらくした後、次のような修正依頼が届いた。
修正箇所は実に15箇所に及ぶ。それぞれの番号には詳細な解説(
pr16121410.pdf)、参考にする論文等も指示されていた。この時点で最も参考にされた標本はエウロパサウルスであった。
エウロパサウルスの頭骨レプリカ。実際にはさらに多くの資料が届いていた。
この修正指示を読み込み、急ぎ、頭骨を描きなおしたのだが、それは修正ではなく、全く新たな制作をすることになった。出来上がったのが、締め切りの日の早朝という瀬戸際だった。記者会見に間にあわせるために、どうしても期日内に必要だったのである。
環椎と下顎を分けて描いているのは、後から組み合わせて、顎の角度などを変えて図示できるからである。また、別々に描くことで修正を容易にすることができる。この手法はこの後の全身骨格でも踏襲される。
そしてこれが頭骨をもとに復元されたTambatitanis amicitiae の頭部である。
だが、頭骨と頭部の修正はこの後も続くのである。
デッサンと呼ぶには短時間(120分)の制作で、全て描き込めたわけではないが、20分ごとに記録撮影をしていたので、順を追って画像をアップしてみた。
20分。簡単に当たりをとり、頭部から描き進める。
40分。
40分ディテール。
60分。
80分。いまだに下半身は手つかず。
80分ディテール。100分のプロセスを撮影し忘れてしまっていた。
120分。完成。膝から下は線描だけでしあげることになってしまった。B2サイズ。イラストレーションボード(BBケント細目)に鉛筆。
ディテール。
ディテール。