『アケボノゾウの群れ』は平成20年度の成安造形大学特別研究助成金により制作をした。数名の研究生との共同作業で、下地塗りやトレースなどで協力してもらった。
当時のイラストレーションコースで共有していたスペースに、短期的に作業場所を確保し、公開制作という形をとって進めていった。
かなり初期の段階で描いたラフスケッチ。新しく組み立てられた骨格を元にしている。
さらに精度の高い復元を行うため、撮影した骨格図をトレースする準備を研究生にお願いしているところ。
トレースした骨格図の上から肉付けをしていく。方眼の線が入っているのは、キャンバスに拡大する目安にするためである。このエスキースはB1サイズ。
かなり進んで来た状態。鉛筆でどんどん描いていく。
背景の一部を研究生にお願いしながら、複数のアケボノゾウを描き込んでいく。
毎日毎日、大量の鉛筆を削ってくれたのも研究生。今、彼はイラストレーション領域の助手の一人である。結構、長い付き合い。
完成したエスキースを元に、方眼の位置を拾いながらキャンバスに拡大していく。キャンバスのサイズはP120号(1120 1940mm)。
ゾウの皮膚を表現するため、かなり極端にテクスチャーをつけている。透明な素材のため、写真ではあまり目立たないが、表面はかなり凸凹している。全てアクリル絵の具による制作。
監修者の小西さんと復元について検討中。制作はまだまだ序盤。
偶発的な効果を狙って、絵の具を上からドリッピング。
徐々に浮かび上がってくるアケボノゾウ。構図はほぼ完璧に写されているので、細部から描いていく事ができる。
ディテール。
胴体へも描写を広げていく。
テクスチャーの凸凹がより分かるように、斜め上から撮影してみたもの。
(続く)
通称アケボノゾウ、学名は
Stegodon aurorae。復元の元になったのは、滋賀県多賀町で発見された、非常に保存状態の良い個体からである。この復元画を制作したのは2008〜2009年だが、このアケボノゾウの標本の復元作業は発掘直後に行われており、リアルな復元模型も作られていた。そんなアケボノゾウをなぜ再度復元したのか?今回の復元画の監修者である小西省吾さん(
みなくち子どもの森自然館)は、発掘直後の骨格復元の監修者でもあるのだが、当時から自ら復元したアケボノゾウの姿勢に疑問を感じており、機会があればやり直したいと考えていたということだった。骨格復元をやり直す事が決まっており、それと同時に復元画を描く事ができたのは幸運だった。
かつてのアケボノゾウは胴長で短足、ダックスフントのような絶滅ゾウだというのが定説だったが、再検討した結果、現生のゾウと比べてそれほど違うプロポーションではないことが分かったのである。
従来のアケボノゾウ。肩甲骨の位置が低く、前脚が短く感じられる。
新しく組み立てられたアケボノゾウ。肩甲骨の位置が大きく違う。
ふたつの骨格を重ねてみたもの。重要なのはどちらも全く同じ標本を使っているということだ。復元の違いで、これだけシルエットに差がでてしまう。このまま肉付けをしたら、違った種に見えるだろう。
復元画を描くために描き下ろした骨格図。
正確とは言えない部分もあり、あくまでも推測ではあるが、当時、筋肉を復元してみたもの。画像がかなりの枚数になるので、いくつかのエントリーに分けて紹介していこうと思う。