STUDIO D'ARTE CORVO

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update 2020.05.10

Tambatitanis amicitiae の復元プロセス1(頭骨編)

現在、Tambatitanis amicitiaeという学名がついているが、復元をスタートした当時はまだ「丹波竜」という通称で呼ばれていた。Tambatitanis amicitiaeは竜脚類の一種で、復元の結果導き出された全長は約15mほどである。竜脚類としては特別大きなものではないが、日本で発見された同じグループの種の中では屈指の保存状態である。
監修は兵庫県立人と自然の博物館の三枝春生主任研究員。三枝さんは本来、化石ゾウの研究者なのだが、丹波竜が兵庫県内で発見されたため、期せずして恐竜を研究することになってしまったという経緯がある。
最初に始めたのは、頭骨の復元である。およそ完全とは言い難いが、脳函(ブレインケース、脳の入る部分)と下顎の一部が保存されていた。脳函も下顎も幸運なことに、重要な部分が残されていた。脳函には頚椎へつながる関節があり、環椎(第一頚椎)も同時に発見されていた。下顎には最も後ろまでの歯槽が残されていて、どの位置まで歯が生えていたかが推測できる状態である。

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とはいえ保存された部位は大きいとはいえない。それ以外の部分を同じグループに属すると考えられる別種などから推測するしかない。最初に渡されたこの図版から制作したラフが次のものである。

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さらにこのラフをもとにペン画で仕上げていった。締め切りが迫ってきていたこともあり、少し急いで進めたのだが、それが結果的にさらに大きな労力をかけなければいけないことになってしまった。


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茶色く色の付いている部分は発見されている部位。この図版を三枝さんに送ったところ、しばらくした後、次のような修正依頼が届いた。


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修正箇所は実に15箇所に及ぶ。それぞれの番号には詳細な解説(pr16121410.pdf)、参考にする論文等も指示されていた。この時点で最も参考にされた標本はエウロパサウルスであった。

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エウロパサウルスの頭骨レプリカ。実際にはさらに多くの資料が届いていた。
この修正指示を読み込み、急ぎ、頭骨を描きなおしたのだが、それは修正ではなく、全く新たな制作をすることになった。出来上がったのが、締め切りの日の早朝という瀬戸際だった。記者会見に間にあわせるために、どうしても期日内に必要だったのである。

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環椎と下顎を分けて描いているのは、後から組み合わせて、顎の角度などを変えて図示できるからである。また、別々に描くことで修正を容易にすることができる。この手法はこの後の全身骨格でも踏襲される。

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そしてこれが頭骨をもとに復元されたTambatitanis amicitiae の頭部である。
だが、頭骨と頭部の修正はこの後も続くのである。






『アケボノゾウの群れ』制作プロセス 3

少し間が空いてしまったが、『アケボノゾウの群れ』制作プロセス完結編。
学生と一緒の制作ということもあって、こんな遊びも同時にやっていた。

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ちょうど制作をしていたスペースの入り口のところに、公開制作の広報としてポスターをつくって掲示していた。春休みだったこともあり、それほど学生の見学はなかったが、熱心に見に来る何人かの学生もいて、制作現場は毎日慌ただしかったのをよく覚えている。

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メインのアケボノゾウがほぼできあがってきた。

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奥のアケボノゾウはまだまだこれからである。

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ゾウの肌を表現するために、かなり極端にアクリルメディウムでテクスチャーをつけている。

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展示も意識した公開制作スペース。

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主役であるアケボノゾウは、ほぼ完成まで進んできたが、この後、重大な間違いが見つかる事になる。

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化石標本の写真と比較したところ、奥のアケボノゾウの牙の角度が、大幅に間違っている事に気がついたのである。

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どれほど完成に近づいていても、修正すべきものは修正しなくてはならない。

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さらに奥のアケボノゾウにまで影響が出る。

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牙の修正完了。ようやく背景へと筆を進めていく事ができる。

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眼のディテール。少し写真がピンぼけ。

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完成。ほぼ1年にわたるプロジェクトだったが、実際に制作に費やせた期間は3週間ほどだった。骨格標本の組み立てを待って進めた事もあり、大幅にスケジュールが後ろへずれ込んでしまった。ただ、復元画の制作には、どうしてもこれぐらいの時間はかかってしまう。復元画のようなものでよいのか、復元画が必要なのか、で時間もコストも大きく変わってしまうのである。

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