nature art

上位階層へ

絵本「ティラノサウルス」が出来るまで

戻る 次へ
田中真士
◆ティラノサウルスの時代の生物を調べるにあたって苦労した点はなんでしょうか?
やはり、なかなか良い資料が見つからなかった事でしょうか。ただひたすら文献収集の日々。気の遠くなるような作業でした。ま、作業自体は至って地味なので、特に書く事もないのですが、一つだけ。
散々苦労して、ようやくリストが出来てきたかな〜という時に、ふとネットで調べてみたら・・・ズバリ「ヘルクリークの生物相」なんてサイトがあるじゃないですか。いやもう何て言うか、とりあえず「アホじゃん俺!!」っていう (笑)。

◆作者の描くティラノサウルスのイメージと、
自分の考えるイメージの共通点、相違点はなんでしょうか?

元々、小田さんと僕の持っているティラノ像はかなり近かったので、相違点は少ないです。 僕が「(ティラノ復元において)ここは絶対死守して欲しい!」と思っていたポイントもしっかり抑えられてますし、今までのどんな復元よりも僕のイメージに近いものになっていて、とても嬉しいです。
強いて言うなら、僕は「メス取り合戦」は案外大人しかったんじゃないかと思っている事。それと、子ティラノの顔はもっと細長い方が良いかな、という事。そのぐらいですかね。

◆この絵本に対する自由な感想、批評をお聞かせ下さい。
絵が本当に素晴らしく、特に後半の迫力は秀逸です。反面、本文が硬く、少し冗長な気がするのと、また、解説ページの内容が、どこでも見られるようなごくありふれた恐竜概説で、あまり効果をあげていないのが残念です。
いっそ、各ページの詳細な補足は最後の解説ページに回してしまい、本文は大幅に削って、あとは「絵」に語らせる・・・そういう形でも良かったかもしれません。小田さんの絵には、それだけのパワーがあると僕は思っています。

以上、今回は少し辛口の感想となってしまいましたが、図版の素晴らしさがあるからこそ、今後への期待も込めて・・・と取って頂ければ幸いです。学者でも研究者でもなく「画家」さんならではの視点を生かした、小田さんの情熱とコダワリがたっぷりつまった本。これからも、期待しています。
たなかまさし[アルバータ大学学生]
1981年、東京生。現在カナダアルバータ大学在学中。毎年博物館や恐竜展の臨時スタッフとして化石クリーニングや展示解説などを担当。個人で、恐竜・古生物関連の解説書執筆や、翻訳も行う。
boropinmarsy288@yahoo.co.jp
http://www.geocities.jp/boropinmarsy288/ (現在休止中、再開予定あり)