クロッキーとドローイングを明確に分ける定義を僕は持っているわけではないが、ドローイングはある種の完成度を伴った表現であると考えている。線で素早く描くという意味であれば、フランス語と英語の違いでしかないが、あえて分けておきたいと思う。
今回の手法は以前、イラストレーターの
井筒啓之さんが主宰する青山塾で、体験授業を受けた時に教えてもらったものである。
1 画面の上から下に描いていく。
2 顔をしっかりと描く。
3 できるだけゆっくりとした線で、形を見る速度と合わせて、美しく長く引く。
4 線を間違えたと思ったときは消して描きなおす。
5 時間は10分。
これらの条件で学生にもやってもらったのだけど、なかなか難しかったようだ。しかし、いつまでも完成しない、素振りのようなクロッキーを繰り返しても、目的が曖昧になってしまう。どんなときでも、その条件の中で達成出来る最高の完成度を目指してほしい。ただ、漫然とモデルを描いていてもダメだろう。枚数を重ねるだけでは意味がないのである。
これは5分だけ描いたもの。上から描いて途中で終わっている。
Hiroさんの胸部の写真を見ながら、骨格と筋肉のスタディスケッチをしてみた。単一のタッチで骨格と筋肉の描き分けはしていないが、まず鎖骨、胸骨の位置を見定めて、それぞれの筋肉を描いていった。描いた筋肉は三角筋、大胸筋(鎖骨部、胸骨部、腹部を描き分け)、上腕二頭筋、上腕三頭筋、大円筋、広背筋、前鋸筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋など。それぞれの筋肉の起始、停止を想定しながら、関節の位置に注意しながら描いていく事が重要である。
こちらが参考にした写真。トレースしてやってみるのも、ひとつの方法である。
制作年:2015年/サイズ:650 x 500 mm/ボール紙に水性ボールペン
5月2日に開催した美術解剖学講座で最後に描いた、20分の男女ダブルポーズクロッキー。クロッキー帳のページが無くなって、裏表紙になっている台紙のボール紙に描いた。
先日の授業内に解説を加えながらデモンストレーションで描いたもの。15分。どの線を拾うのか、身体に表れるレリーフのそれぞれが何なのか、今何を描いているのかを、リアルタイムに解説しながらの15分だった。美術解剖学を学んだからといって人体が描けるようになるわけではないが、構造を知ることでより明確に観察できることにつながる。曖昧なままなんとなく描くのではなく、自分の中で確信を持って線を引く、陰をつける、そんなことができるようになってほしいと思っている。そういった描き方が全てではないことは分かった上で、僕の授業では美術解剖学をベースに描くということを学生に求めている。どちらかといえば静止したポーズを描くためというより、動きのある人体を描くための部分が大きいかもれない。
およそ180分ほど。
日大芸術学部テクニカルイラストレーションの授業で、学生と一緒に描いたもの。授業中には終わらなかったので、宿題として仕上げて来た。ステッドラーのピグメントライナー0.1mmとイラストレーションボードはBBケントの細目。骨格図を元に描いているが、自分の手ではないのでどうしてもずれが出てします。学生にはそのあたりも難しかったようだ。ただ、基本的な関節の位置を間違えてはいけない。
紙に水性ボールペン。10分。
モデルを見ながら解剖学的な特徴を強調するように描写。この1枚では骨格を。
この2枚では筋肉を。10分で描ききることはできないが、ひとつひとつの解剖学的特徴を見つけながら描いている。
20分ポーズ。木炭紙サイズ。紙に水性ボールペン。右側の解剖図は休憩時間中に描いたもの。
10分ポーズ。B3サイズ。紙に水性ボールペン。右側の解剖図は休憩時間中に描いたもの。