きっかけは公式に発表された骨格図が、あまりにほ乳類的であったのでTwitter上でコメントしていたら、周りからついつい乗せられて描くことになってしまった。ガチャピンは設定では恐竜の子どもということになっているから、ほ乳類的あってはまずいだろうと思ったのである。
そして、フォロワーからも次々とこんな声が。
「もっと恐竜っぽいガチャピンの骨が見たくなってきた。」
「ガチャピンに強膜輪はないの」
という声に描こうかなとつぶやくと。
「実は期待してますw」
「期待(゚∀゚)wktk」
「見てみたいです。小田さんが描いたガチャピン骨格。」
ということで出来上がったのがこれ。
そこについたコメントが。
「何というか、すごいですね・......(笑)。背中のヒレの形状は、この間出てたステゴサウルスから進化したという説を反映させてあるのでしょうか?」
「頭骨のつき方が気になります。首はS字?」
「側頭窓とか、指骨の数とか、叉骨とか、肩甲烏口骨のかたちとか、骨盤の形とか、腹肋骨とか、そんなところがポイントです。」(小田)
「咬筋強そうですねぇ、下膨れの顎が実は筋肉とか、その太い筋肉の生む力が2本の出っ歯に集約されるためにものすごい圧力を生み出せそうだとか色々と妄想が。」
「噛む力が強そうですね。何でもよく噛み砕いて食べる姿が子供達の見本になりそうです。」
もっと素朴な突っ込みとして、「頭かじられてる」とか「眼に骨がある」「まぶたって骨?」というコメントも多かった。眼の骨は強膜輪といって、恐竜と同じグループに属する鳥類には一般的なもので、は虫類にも広く見られる眼球を支える骨である。まぶたの骨は鎧竜の一種であるエウオプロケファルスから発見されている。かじられていると表現されたくぼみは、上部側頭窓と言って恐竜などは虫類に見られる特徴である。
鳥の強膜輪。
エウオプロケファルスの頭骨に見られるまぶたの骨。
こんな調子で遊んでいたら、さらに完成度の高いものを描きたくなってくるのが性分である。
そんな気分と相前後するように、コメントがどんどん専門的にエスカレートしていった。
「前肢の指とか、頭骨見てると、どっちかというとヨロイ竜っぽいかなぁ、とか思ったり」
「前肢はサイカニアっぽい。」(小田)
「そう(笑) 子供のヨロイ竜は尻尾のハンマー無いかも、って説もありますし。 」
「あ、後肢の末節骨は無い、もしくは小さめのほうが>爪が無い 」
「有識者から以下のような突っ込みが。『前肢第三指は、ヨロイ竜ベースなら指骨3つプラス末節骨が無難(第2指と一緒)。ステゴベースなら第1~3指まで指骨は2つ(しかも、第1指以外末節骨があるかが微妙)』」
「体重支持の役割を失って、物を掴んだりするなら、もう少し指骨が伸びても良いのではないかなぁとも思うのです。。。」
そして第二稿。
ブラッシュアップ。上部側頭窓を後ろにずらし、下顎の関節を再検討した。横からの図で頚椎と頭骨の関節部分が明確になっている。直立歩行のため、脊椎は人間のようにS字曲線を描くだろう。指骨を減らし、末節骨も退縮させた。
「そのままの脳函の大きさにすると、脳が大き過ぎるのか。骨に包まれているとするとゾウの様に蜂の巣状の部分がある可能性が。メロン体があるとすると、頭蓋骨は大きくえぐる必要が出てきます。」(小田)
「ガチャピンは喋れるので気道開かせないと流暢に喋れないから骨格近くに気管が有るなら曲がっちゃいけないはず。 なので背骨は体中央に有ると推測される」
「背中の皮骨板との関係から神経棘突起を相当長くしないとだめですね。」(小田)
「恐竜ということなので、鳥とも言えますし、直立した姿勢から足の構造はペンギンに近いと推察しています。」(小田)
ガチャピンの手の突起は、このサイカニアの前肢を参考にしています。
さらに姿勢について某氏からマジレスが「ネタマジレス。これだと頭骨を支えられない。大後頭孔はもっと前方なはず」
僕の答えは「恐竜派生で考えたので中途半端になりました。中央に寄せて、頚椎の神経棘突起を伸ばすことを考えています。」(小田)といったちょっと言い訳めいたものに。
「ちゃんと双弓~竜弓(つまり恐竜)の特徴である「咬筋のマウントが2対」をおさえている...! 」
「もしガチャピンのように、恐竜の霊長類ができたらどんな姿だろう。鳥は体を捻らないが、直立姿勢で作業を行うために、肋骨の一部が消失する(体を捻るため)ことは考えられる。指は作業に特化した平爪の5本。足は頑強で半趾行の動歩行。雑食で、アンモニアは尿酸の形でうんことして排泄...。」
「目は正面についていて、表情も豊か。歯は雑食に特化して切歯、犬歯、臼歯を持つ。発声は声帯ではなく鳴管をつかい、低周波で遠くの個体と意思疎通も可能。もし文明を持つなら、低周波騒音を避けるため、素朴または繊細な機械文明を築くだろう。」
どんどんイメージを膨らませていく人も。
「ヨロイ竜なら、このクライトンサウルスが顔や背中がガチャピン似かな~と思ったりするのですが、ガチャピンの背中の板、1列なんですよね。で、背中の板に関しては、ステゴの互い違い2列の並びが限りなく中央に寄って、見た目1列に見えている、というほうが自然かな~とか。」
「声帯ではなくて鳴管を持っていて、オウムや九官鳥のようにしゃべっているのかも。あと、肺に気嚢があるかどうかも気になる。スポーツ得意だし。」
鳥(恐竜)は肺に気嚢という袋状の構造を持つ。肺の上下についていて、フイゴみたいに伸縮する。気嚢自体に酸素を取り込む能力はないが、吸うときに肺と気嚢に酸素を貯め、吐くときに気嚢の酸素を肺に送ることで、常に肺に酸素を送り込める。この優れた呼吸法で、高い身体能力を可能とする。」
そういったもろもろのコメントをとりいれつつ完成したのがこれ。
ガチャピン骨格図最終版。後頭孔の位置を前にずらし大きな頭骨を支えやすくした。人間と同じぐらいの脳だと、内部を蜂の巣状にするなどして、かなりの軽量化が可能だと考えられる。剣竜と鎧竜のハイブリッドな特徴を持った骨格とした。
「恐竜の場合、骨盤まで肋骨でがっちりと篭状の構造になっている。要するに腰椎がない。しかしガチャピンの柔軟な運動能力を考えると自由に動ける腰が必要だろう。なので腰椎の存在を想定してみた。横隔膜は存在しない可能性が高い。」(小田)
「やはりあれだけの巨大な頭を支えるには頚椎が湾曲していては無理なのか。」
「巨大だけど軽量化されていると考えるのがよいと思います。後頭孔が中央によったので、かなりバランスはとりやすくなったと思います。」(小田)
「なるほど。後頭部は意外に鋭角なんですね。」
「多くの靭帯と筋肉でささえることを考えてスペースをとっています。」(小田)
「あと、左足の大腿骨に角度がついているのは何故でしょうか?」
「もう少し水平でも良かったのですが、ペンギンに近いスタイルです。主に膝から下を動かすことで歩きます。」(小田)
「脛骨から先が長いのはそういう理由だったんですね。ありがとうございました。」
といった感じで完成いたったのだけど、さらに発展したものが友人の手によってできあがってきた。
幻の論文(笑)
ステゴサウルスからどう進化したかの丁寧な解説書。
これらの3DCGはすべて、友人である荻野慎諧氏の手によるものである。
ただ、どこまで考察したところで、実際の骨格図はこうであっただろう。
でも、これを出したときが一番怒られた。「中の人などいない」と。
Twitterでリアルタイムで見ていたときが、おそらく一番面白かったと思うので、このエントリーは備忘録のようなものだと思っていただければ。
今でも読めるtogetterのまとめはこちら。これらのまとめからこのエントリーは再編集しました。
いまでも読むと臨場感があって面白い。ただ、とこどころ画像が抜けてしまっているところがあります。
これほど面白いネタはそうそうないかもしれないけど、なにか思いついたらやってみようと思います。