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2013年1月 2日

レ・ミゼラブル


子供の時だったか、随分昔に小説を読んだ。子供向けに翻案されたものだったかもしれない。
この映画はミュージカルとして上演されているものを元に作られている。なので俳優たちは常に歌っているのだが、そんな不自然さを凌駕する映画の持つリアリズムに圧倒された。
容赦ない現実の厳しさを突きつけることができる表現こそ、映画のもっとも有利な点なのかもしれない。舞台では制約が多いし、小説は読者の想像力に依存する。しかし、映画は全てをさらけ出すように眼前に映像として見せてくれる。
19世紀の汚れたフランスの町並み。ほとんど風呂に入る習慣のなかった汚れた人々。不衛生きわまりない女郎宿。吐瀉物にまみれた飲み屋の風景。汚物まみれになる下水道。もちろん映画という虚構の世界の話なのだけど、その現実に打ちひしがれるように、その世界にのめり込んでしまった。映画の凄みを実感させられた、そんな映画だった。
長い上映時間にもかかわらず、まったく飽きることなく見ることが出来た。話の展開も結末も知っているのに、退屈することもない。年始に素晴らしい映画を観ることが出来た。
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パンフレットを見ながらスケッチ。アン・ハサウェイ。
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パンフレット見ながらスケッチ。ヒュー・ジャックマン。


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投稿者 corvo : 23:22

2011年8月24日

DVD『3時10分、決断の時』


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原題は"3:10 to YUMA"。「決断の3時10分」のリメイクで、オリジナルはまだ見ていない。
以前から西部劇が好きだったのだけど、COLT S.A.A.をプレゼントしてもらってから、俄然興味が復活してきたのである。なぜ好きになったのか記憶を辿っていくと、おそらく原点は「荒野の少年イサム」に行き着く。最初はアニメ、中学生ぐらいの時に原作漫画を読んで一気にはまった。洋画の西部劇に興味が出てきたのも、ちょうどこの頃である。

表題のこの映画。結末に賛否があるらしいのだけど、存分に楽しむことが出来た。4日間という短い時間の中に緊張感のあるエピソードが凝縮されている。強盗団のボスを護送するというあらすじに、とても地味な展開を予想していたのだけど、娯楽作品としても、アクション映画としても優れた1本。
2007年製作、2009年日本公開と新しい作品なので、銃やガンベルトなどの装備品の時代考証もしっかりしている。ホルスターの位置、それぞれの愛用の銃にもバリエーションがあって、そういった点からも楽しめた。特に強盗団の副頭目チャーリー・プリンスが使うS&Wスコフィールドが、狂気を含んだ演技とも相まって全編に渡って強い印象を残す。このモデルガン、入手難なのだよなあ。

西部劇の何が魅力的なのか、うまく説明できないのだけど、大きな要因は銃の存在だろう。それもシングルアクションのオールドガン。いちいち撃鉄を起こさなければ撃つことが出来ない銃。19世紀末にはすでにダブルアクションリボルバーも存在したが、主流は圧倒的にシングルアクションだろう。
アウトドア趣味もないのにダッチオーブンで料理したりするのも、西部劇の影響なのかな。
まあ、好きなものはしょうがないので、ちょこちょことレビューを書くかもしれません。
 


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投稿者 corvo : 21:11

2011年5月 1日

『塔の上のラプンツェル』


1日は映画の日ということで、2件の映画館をはしごしてきた。まず1本目は『塔の上のラプンツェル』。劇場で
3D映画を観るのは実はこれが初めて。見始めは少し気持ちの悪さがあったのだけど、すぐに慣れて映画に入り込むことが出来た。
結論から書くと、これは素晴らしい作品。目まぐるしく変わるビューポイントは3DCGでなければ表現することができない。2Dアニメでは広がりのある背景を描くことが出来ても、連続してビューポイントが変化していく画面を動画で作ることはほぼ不可能だと言ってよいだろう。
ストーリーについてはネタバレになるので触れないが、この作品は『カリオストロの城』へのオマージュが随所に見られる。僕には全てが『カリオストロの城」であると言って良いほどに感じたのだけど、意外にそういったレビューを見ることがない。自明過ぎてだれも書かないのかな。
ラプンツェルの18歳という年齢設定は絶妙だったかもしれない。子供ではなく、大人の女性として描くことが出来て少女の面影も残る。世間知らずだが(というか社会そのものを見たことがない)、無謀とも思える勇気を持つ意思の強い女性として描かれる。これまでの3DCGでは、虫やおもちゃやモンスターなどのキャラクターに違和感を感じることはなかったが、人間が出てくるたびにリアリティのなさに興ざめを感じざるをえなかったのだけど、このラプンツェルでは命のある人間のキャラクターとして見ることが出来た。僕がもっとも感心したのはキスシーンだ。唇をどう重ねるのか、ディテールまできっちりと描写されている。日本のアニメだと唇と唇が触れるだけで、きわめて記号的に扱われることが多い。CGでありながら身体性から逃れられない欧米人の性(さが)をかいま見た気がする。
文句なしに素晴らしいアニメ作品の一つである。まだ未見の人は是非!
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ラプンツェルを落描き。とにかく可愛い!

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投稿者 corvo : 23:57

2010年11月11日

"Good Will Hunting"

10年ほど前、友人から勧められて観たのが最初だった。
ボストンを舞台にした、ある天才的な頭脳を持った青年の再生の物語。そう、これは成長ではなく、再生なのだと思う。主人公ウィルが自分の中に全く欠落していた感情を、思考を取り戻す物語。
ウィルは貧民街に暮らし、大学の掃除夫をしながら暮らしている。趣味は読書で、驚異的な記憶力と数学の天才である。そのウィルを見いだすのが数学者ランボー教授。地位も名誉もあり、大学でも人気の教授であるが、ウィルの才能を見いだし、何とか彼を世に出そうと尽力する。
あらすじを書いてもしょうがないので、ストーリーは実際に観てもらうとして、自分自身が大学教員になったことで、見えてきたものがある。ウィルを発見したランボーは彼の才能を認め、彼の将来を思いながらも、嫉妬心を捨てることが出来ない。圧倒的な才能にであったしまった苦悩が描かれる。
そして、ウィルの再生に大きな役割を果たすのが、セラピストのショーン。彼の存在なくしてはウィルが欠落していた人間性を取り戻すことはなかった。でも、一番重要な役割を担っていたのは、いつもウィルと一緒に仕事をし、酒を呑み、遊ぶ、幼なじみのチャッキーだ。
ウィルはずっとそこに暮らして、家族を持って、近くに居たいと言う。それをチャッキーは20年後もそんな暮らしをウィルがしていたら、本気で殺すと答える。厳しくも優しく、ウィルの背中を強く押すチャッキー。後日、いつものように朝迎えに来て、ウィルが家にいないことを確認したときの笑顔が実にすがすがしく感動的だ。
ウイルと恋に落ちる医学を志す大学生スカイラー。決して美人ではないが、人一倍ウィルを理解しようとし、彼の心を解きほぐそうと努力する姿が健気で涙を誘う。彼女はウィルがついていたつまらない嘘も、彼を非難することなく次々と受け入れていく。そんな態度が、ウィルの最後の決断につながっていくのだろう。
つくづく思うのだけど、教員が学生に対して出来ることは限られている。本当の意味で彼らの心を開いたり、動かすことは難しい。そんなときもっとも重要な役割を担うのは、同世代の友人なのだと思う。チャッキーがウィルの背中を半ば強引に強く押し出したように、本当の意味で大きな影響を与えてくれるのが、いつも近くに居てくれる仲間なのだと思う。
終盤、ランボーはウィルに「感謝の念はないのか!」と憤る。ああ、僕も同じことをしてしまっていないだろうか。教員なんて学生のことを真剣に考えながらも、最後の最後でボロを出してしまうものなのだろう。
「当たりの宝くじを換金できる権利」、チャッキーはウィルの才能をそう表現する。皆がうらやむ、持ちたくても持てないもの。それを無駄にすることを許さないと。
何度も、何度も、涙があふれてくる。そんな映画だ。
是非、多くの人に見て欲しい。

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投稿者 corvo : 12:02

2010年8月23日

『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』渋谷ユーロスペース

またまた日曜日の話、Bunkamuraの後、今度はユーロスペースへ移動して、映画『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』を観た。
新聞やtwitterでも話題になっており、ちょうど関東にいることもあって、どうしても観たくてスケジュールの中にいれたのである。
ひと言でこの映画を表すなら「赤裸々」。これほどオープンに公共施設建設のどたばたを描いたドキュメンタリーはなかったかもしれない。予告編は実にテンポが良く、ユーモラスであるのだけど、本編にはある種の悲壮感が漂うほどにシリアスな問題が噴出する。
僕がこの美術館を訪れたのは1991年。学生の時の一人旅だった。レンブラントを観るために行ったといっても過言ではない。もちろん、彼の自邸(破産前の)にも行ってきた。
今は改装中で入ることが出来ない。多くの美術品も収蔵庫に収められたままだ。予定では2004年に始まった改築工事は2008年に完成し華やかなオープニングをかざるはずだったのに、延びに延びて今では2013年にオープン予定となってしまっている。
その原因の多くは、改築計画のスタート当初に巻き起こったサイクリスト協会による、建築プランの変更を求める騒々しいキャンペーンのためである。改築計画によって、美術館を貫く交通路が閉鎖されることに反発したことが原因であるが、このことが大きなプランの変更につながり、建築家は振り回され続ける。
建築家の一人が言った、「これは民主主義ではない。民主主義の悪用だ。」という言葉は重い。
映画を見終わって、誰が一体ハッピーになったのか?誰もハッピーな結末を迎えてない。妥協に妥協を重ね、オープンは遅れに遅れ、予算を垂れ流し、結局、自転車も改築が終わるまでは通行することができない。

時間は無情に流れ、その時間を取り戻すことはできない。
こんな不幸な出来事に、早く終止符を打って欲しいと願ってやまない。

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投稿者 corvo : 23:58

2010年8月21日

『インセプション』

近くのシネコンで『インセプション』レイトショーを観てきた。
非常に面白い映画だった。見終わった後の頭のくらくらした感じは、夢をモチーフにした映像世界に引き込まれていた証拠だろう。上映時間の長さも全く気にならなかった。
目まぐるしく変わる夢の世界がストーリーを複雑に見せているが、基本的な筋道は非常にシンプルである。それぞれにプロフェッショナルなメンバーがチームを組んであるミッションに当たるのだけど、誰一人裏切ることなく、仕事をやり遂げていく様は気持ちが良かった。誰も死なないというのも美しい。
「夢」だからと言ってしまえばそれまでだが、主人公はある現実の悲劇をずっと引きずっている。これ以上書くとネタバレになるので、是非、映画館で。

シネコンの廊下が劇中のホテルの廊下に似ていて、ちょっと気持ち悪かった。ディカプリオが建物の隙間に挟まって必死になっているシーンを見て、イッセー尾形の『ヘイ!タクシー』を思い出してしまったのは、ここだけの話だ。

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投稿者 corvo : 23:49

2010年7月23日

サイタマノラッパー2

もう先週のことになるのだけど、同僚の先生にむりやり連れられて(というわけでもないのだけど)、京都駅近くに新しくできたシネコンにサイタマノラッパー2を観に行ってきた。この日は頭が沸点に達したまま何時間もたっていたので、緩い映画を観てクールダウンしようという目論見もあったのである。
この映画、緩いといっても、次から次へと厳しい現実が襲ってくる。主人公たちはある目的に向かって努力を始めるのだけど、それが最後まで実現することはない。なんとも釈然としない、何の奇跡も起きない、なのになんだかすっとする不思議な映画。

でも、この日一番困ったのは映画館のシート。
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これにどう座れと?
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全体はこんな感じ。結局、一つのシートを占有する形で別々に座ったのだけど、一人で来て混雑してきたら、「ご相席よろしいでしょうか?」なんて聞いて、見知らぬ人と二人並んで観なくてはいけないのだろうか。謎だ。
空いてて良かった。

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投稿者 corvo : 01:28

2010年6月 5日

『孤高のメス』

夜、妻と映画のレイトショーを観に行ってきた。
観てきたのは医療ドラマ『孤高のメス』。
静かに心をゆさぶる映画だった。危機的な事態に直面し、重大な判断を下さなくてはいけない場面になり、物語はクライマックスへと進んでいくのだが、そこには安っぽい盛り上がりはなく、主人公である医師とそのチームは淡々と、そして粛々と自分たちがやるべき仕事をやり遂げていく。物語が平坦なのではない。人間がある事実に対峙したとき、全力を持って向き合うしかないのだと、そんなことを教えてくれる映画である。
映画作りにも、それは表れていた。数多く外科手術のシーンが出てくるが、医療関係者が見ても納得のいく映像になっているらしい。それだけのものを作り上げるには、膨大な時間の試行錯誤と検証が必要だったはずだ。おそらく監修にあたった医師も辛抱強く指導にあたったことだろう。
派閥を作り保身に明け暮れる医師たちも登場するが、主人公たちと物語の上で接点を持つことは全くない。そこに余計なやりとりがないことで、随分と物語をシンプルなものにしている。それぞれの登場人物が自分の役割を全うしようとしており、それがチームワークとなって涙の涸れることのない一作に作り上げたのだろう。
本物の医師が出てくるテレビのドキュメンタリー番組よりも、はるかに「事実」に重点を置いた演出がなされている印象を持った。
また、パンフレットが出色の出来である。無駄を廃して丁寧に作られていて、見終わった後に読むと、より強固に作品世界を知ることが出来る。パンフレットに余計な第三者の賛辞などいらない。

見終わった直後にもう一度「観たい」と思う、そんな1本である。

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投稿者 corvo : 23:59

2010年6月 3日

『アンドリューNDR114』

結末を知っているからこそ、序盤から涙があふれる希有な映画しれない。物語は究めてシンプルで奇をてらったところはどこにもない。どんでん返しもないし、大きな抑揚があるわけでもない。きわめて淡々と時系列で進んでいく。もし、この流れの中に過去を回想するような場面が挿入されていたら、一気に興ざめしただろう。初見であっても十分に予測できる結末は、安心して見ていられる。
僕が最初に見たのは数年前なのだが、実を言うと主人公のアンドリューに嫉妬したのを覚えている。このアンドリュー、大量生産された家庭用ロボットのひとつに過ぎなかったのに、ひょんなことから芸術的才能を発揮させる。それだけなら嫉妬することもないのだが、ロボットであるがゆえに寿命に制限がなく、徹底的に自分の技量を高めていくことが出来るのだ。
かつて葛飾北斎がこう言っている。
「私は6歳より物の形状を写し取る癖があり、50歳の頃から数々の図画を表した。とは言え、70歳までに描いたものは本当に取るに足らぬものばかりである。(そのような私であるが、)73歳になってさまざまな生き物や草木の生まれと造りをいくらかは知ることができた。ゆえに、86歳になればますます腕は上達し、90歳ともなると奥義を極め、100歳に至っては正に神妙の域に達するであろうか。(そして、)100歳を超えて描く一点は一つの命を得たかのように生きたものとなろう。長寿の神には、このような私の言葉が世迷い言などではないことをご覧いただきたく願いたいものだ。」
長く生きれば良いという単純なものではないが、集中して枚数を重ねていきたいものである。

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投稿者 corvo : 02:36

2010年2月22日

『ハッピーフライト』

制作の合間を縫って土曜日に視聴。テレビで放映したものを見逃した直後に、近くのビデオレンタルショップ(非ツタヤ)で100円で借りられるのを発見。見よう見ようと、うっかりしていたら返却期限が20日(土)となっていて、慌てて観たというのが真相である。
これがもう、拾い物の面白さ。すっきりとした爽快感のある、真摯に作られた一本だった。映画の内容とは全然関係なく驚きだったのが、ちょうど同じ日にカワバタさんも観ていた事だ。まさか時間までシンクロしていることはないと思うが、彼のblogのエントリーを読んだ時はちょっとびっくりだった。
カワバタさんも書いているが、プロフェッショナルの凄さを実感させてくれる映画である。ここ数年はよく飛行機を利用するが、たった1機を飛ばすだけにどれだけ多くの人が関わっている事か。ひとつ間違えば大事故につながる航空機の運航が、人間の泥臭い努力と、臨機応変の判断力で飛ばされている事がよく分かる。ただでさえ忙しい空港内のロケは、ANA側にも製作者側にも多大な努力と忍耐が必要だっただろう。
知名度の高い俳優が数多く出ているが、それぞれのキャラクターが立ちすぎることなく、ぴたっとはまっているのも僕の好み。今更ながら、映画館で大勢で観ながら、一緒に笑いたかったなあと思ってしまった。騙されたと思って是非観てほしい良作です。

話しは違うけど、CMの森三中のキャッツアイがちょっとツボ。ボテロみたいと言ったら褒め過ぎか。俊が細いのが納得いかん。

今日の「飛び出せ!科学くん」はミュージアムパーク茨城県自然博物館。収蔵庫に置かれたメガテリウムのレプリカの登場に、なぜかジュラシックパークのテーマ。時代も系統もかすりもしていないぞ。「メガテリウム=恐竜」の人が増えそうな予感。


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投稿者 corvo : 23:48

2009年7月 9日

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

先週の金曜ロードショーで観た『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』。その後、いてもたってもいられなくなるほど『破』が観たくなってしまい、月曜日のレイトショーに駆け込んだのだった。実は僕はエヴァンゲリオンが嫌いだった。テレビシリーズ。その後の劇場版まで全て観た上で、これはとても受け入れられるものではないと判断していたのである。
テレビシリーズの中盤から終盤にかけての盛り上がりにわくわくしながら、どんな結末になるのだろう期待して劇場版を観終わったときのがっかりさ加減。おもわず膝かっくんとなった『ジャイアントロボ THE ANIMATION -地球が静止する日』の最終回以上のものだった。僕にとってはものすごい不快感が残された作品だった。まさにアスカがつぶやく「気持ち悪」な気分だったのである。
そんな経緯があったので『序』を劇場まで見に行くことはなかったのだけど、今回の『破』、とても良い映画だった。予備知識がある程度あって観ているから言えるのかもしれないけど、独立した一本として観ても特筆すべき出来であったと思う。おそらく、現在日本で作ることのできる最高のクオリティを持ったアニメーション作品だ。何を書いてもネタばれになるので、内容は劇場で確認してほしい。特に、マンガやアニメ、イラストレーションを仕事にしたいと思っている人間は観ておくべきだろう。そう思って、学生に「観た?」と授業中に聞いてみたら、なんと25人中2人だけ。なんということか。オンエア時にまだ小学校に上がる前の世代だったとはいえ、あまりに興味がなさ過ぎではないか。みんな真っ先に観に行っていると思ったのだけどなあ。ちょっと残念。

エヴァ絡みでちょっとお遊び。制作は某TA。
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来週開催する火曜クロッキー特別講座「Hiroさんによる美術解剖学」の案内チラシ。これは主に教職員宛ではあるのだけど、思わず「エヴァ風」でオーダーしてしまった。「下肢」なのに「上肢」の絵という突っ込みどころもあるのだけど、満足の出来である。『美術解剖学による人体表現補完計画』なのだ。

忙しければ忙しいほど、こういった遊びが必要なのである。
「サービス、サービスゥ!」

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投稿者 corvo : 02:47

2008年12月24日

『HOT FUZZ』

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劇場で見たのは9月の事。すぐにエントリーに書こうと思いながら、こんな時期にまでずれ込んでしまった。今年、それほど多くの映画を観ているわけではないが、文句なしに面白さでは一番である。
全く予備知識無く観たのだけど、冒頭から何かが可笑しい。凄くまじめなそぶりをしているのだけど、何かが可笑しい。その笑いのツボに、初っぱなから心を鷲掴みにされてしまった。

この映画を知るきっかけになったのは、偶然が重なった出来事からだった。『HOT FUZZ』は当初、日本で公開される予定がなかった。その理由というのが、監督と主演俳優が日本で知名度がないからという、ものすごく情けない、自分たちには映画の内容を判断する価値基準がありません、と豪語するような配給会社の言分んにあったらしい。そこで、「署名運動」という草の根的活動が、公開を実現させることになったのである。
その中心人物にいたのが、マイミクであり友人でもあるわたなべりんたろう氏だった。彼との出会いは、実にひょんなことで、昨年末に開かれた、中学の時の同級生が主催する忘年会に参加したところ、たまたま席が近く、映画『クロウ』の話しで盛り上がった、というただそれだけのことだったのである。その後、マイミクになって連絡をとり合っていたところ、『HOT FUZZ』について知ることになったのである。彼が関わっていなかったら、この映画は僕のアンテナに引っかかってこなかったかもしれない。
すでに公開されたが、引き続き署名活動は行われている。『HOT FUZZ』を応援したい!という方は今からでも是非!

『HOT FUZZ』は実に丁寧に作られている。ただのお馬鹿な映画ではない。過剰なほどに詰め込まれた情報量が、どんどん快感になってくる。まだ2回しか観ていないが、まだ何度でも楽しめるだろう。

東京では年明けに高田馬場の早稲田松竹映画劇場での公開が決まっている。未見の人も、もう一度観たい人も是非。
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1/10(土)〜1/16(金)
<上映タイムスケジュール>
・ホットファズ —俺たちスーパーポリスメン!—:
11:00 / 15:15 / 19:30(〜終映21:35)

・俺たちフィギュアスケーター:
13:20 / 17:35
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実はちょうど先週の水曜日なのだけど、わたなべさんに成安造形大学までご足労願って、いろいろと学生に向けて話しをしてもらった。正式な特別授業というわけではなかったのだけど、『HOT FUZZ』に絡めて、非常に興味深い話しをいくつも聞くことが出来た。ただ、学生の参加が少し少なかったのが残念。課題の締め切り前とはいえ、もう少し興味を持つ範囲を広げてもらいたいものである。
自分から一歩を踏み出さなければ、何も始まらないし、どんな関係も築けないのだから。

わたなべさんとの出会いは最初リアルで、その後はネットが中心だったが、大津まで来て講義をしてもらということにまで発展した。先日知り合ったばかりのモデルのHiroさんは、最初はネットだったとはいえ、すぐに会うことが実現し、とても良い関係を築くことが出来た。
何がきっかけでも構わないが、やはり最後は面と向かって会うしかないと思うのである。そうでなくては、充実した関係を作ることは出来ない。
ネットの中だけの関係というものも僕は尊重しているが、それだけではつまらない。
僕は古いタイプの人間なのかもしれないが、ネットの向こう側にいる、現実に実在する人物にとても興味がある。

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投稿者 corvo : 03:34

2008年12月 1日

『HOT FUZZ』爆音上映会ー吉祥寺バウスシアター

10月に京都みなみ会館で観てから、レビューを書こう書こうと思いながら、いまだ実現出来ずにいるのだけど、明日2日から5日まで、吉祥寺バウスシアターで爆音上映会が開催されるということです。まだ、見ていない人、もし時間があえば是非!
署名活動 によって、ごく少数の映画館で上映された本作。モンティ・パイソン好きなら、はまること間違いなし。そうでない人も、これは傑作です。近々にレビュー書こうと思います。

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投稿者 corvo : 23:41

2008年9月25日

再びBONES

今日の授業でも、再びBONESを上映。昨日と同じ第1話である。昨日と違ったのは、スピーカーと投影画像の大きさ。僕のミスと、元々のスピーカーの性能低さから、迫力ある音響とはいかず、集中しずらかったのかもしれない。
しかし、今日はとっておきの秘密兵器を用意しておいたのだ。というか今日しか間に合わなかったのだけど、オークションで格安で手に入れた、BOSEのラジカセである。BONESとBOES、どこか似ていていい感じだ(何の関係もないけど)。どちらもサイエンティフィックな香りがするじゃないか(と勝手に思っている)。
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非常にコンパクトで、カセットデッキを搭載したモデル。ラジオも聞ける。外部入力端子を使えば、たいていのオーディオ機器はつなげることができる。アンプを搭載した、落ち運び出来るスピーカーと考えるのが良いだろう。これが噂に違わぬ良い音を鳴らしてくれた。
今日は、ちょっと自重気味に「昨日は不評やってん」と上映開始。ドラマが始まってから、デッサン室はずっと静か、というか静まり返っている。「ヤバいなあ、今日も駄目かなあ」と思いながら、僕は自分で楽しむことに専念していた。上映終了後、おそるおそる感想を聞いてみると、皆口々に「めっちゃ面白かった」。ということで、このクラスは来週から2話ずつ観賞して、ファーストシーズン最終話まで見てしまうことに決まったのである。
水曜日のクラスは全話見ることができないが、彼らがその選択をしたのだからし方がない。1/3ぐらいは見たがっていたので、ちょっと可哀想な気もするが、自力でどうにかしてもらうしかない。多数決がいいことばかりだとは思わないが、過半数が望まない授業をやるつもりはない。聞いてはいたけど、これほどクラスによって温度差があるとは驚いてしまう。
どんなことに対しても興味を持つ、ということを大切にしてほしいと切に願うのである。


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投稿者 corvo : 23:58

2008年9月24日

BONESー骨は語るー

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BONES』はアメリカのドラマシリーズ。最近はテレビコマーシャルも流れているので、知っている方も多いと思う。
ファーストシーズンは春頃購入。セカンドシーズンは9月になってリリースが始まった。
骨を愛し、骨に愛された主人公の法医学者が、FBIの捜査官と協力して迷宮入りと思われた事件を解決していくというもの。全ての事件は死体からスタートするので、ショッキングな映像も多く出てくる。また、事件は解決するが、ハッピーエンドというわけにはいかない。そのほとんどは悲劇だ。派手なアクションがあるわけでもなく、大きな盛り上がりもほとんどない。それでも、骨を中心に物語が展開していく様は、すこぶる面白いのである。毎回登場する、遺体の骨格から生前の姿を復元する3DCGは、興味深く美しい。
BONESとは主人公のニックネーム。彼女は勤務する研究室では骨に囲まれている。壁一面、骨の入ったケースだ。会話のテンポ、時々挟み込まれるユーモアも楽しい。

そんな骨にまつわる楽しいドラマを、学生たちに紹介しようと思って、今日の授業内で上映したのだけど今ひとつ食いつきが悪かった。プロジェクターを使って大画面で見ることができるし、質問してもらえればある程度解説することも出来るのに残念。今日は第1話だけだったけど、毎回、様々な骨の名称も出てくるので、その部位を想像するだけでも勉強になると思う。砧骨(きぬたこつ)、槌骨(つちこつ)、鐙骨(あぶみこつ)なんて、美術解剖学的には無関係な部位ではあるけど、少しでも興味を持ったらどこの骨か知りたくなると思うのだけどなあ。
ファーストシーズンは全22話。13回ある授業時間を利用すると、毎回2話ずつ見れば全ての話を観賞することができる。1話が44分なので、2話見ても90分以内でおさまる。ほぼ1限の授業時間だ。来週からモデルさんに入ってもらうが、4時までには全てのポーズのスケジュールが終わってしまうので、時間の使い方としてはいいと思ったのだけど、今日の感じでは不評だった。それでも毎回1話ずつは見せるつもりなので、真ん中ぐらいまでは進められる。途中で面白くなって、全部見たかったと言い出しても後の祭りだぞ。
せっかく、普段見ていないようなものを紹介してるのだから、興味を持ってほしいなあ。これにめげずに、もう少し押していくつもりである。

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投稿者 corvo : 23:35

2008年9月 2日

The Dark Knight

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昨日は夕飯をすませた後、近くのシネコンへ「The Dark Knight」を見に行ってきた。結論から書くと、これは最高の映画の一つ。前作「バットマン・ビギンズ」を見ていないという愚挙をおかしながらも、一つの映画作品として充分に楽しむことが出来た。ただし、楽しんだとはいっても、これは痛快な娯楽作品ではない。
物語の軸になっているものは、きわめてシンプルであり、人間誰しもが心の奥底に持っているある感情の揺らぎがテーマになっている。
ティム・バートン監督作のバットマンでは、ゴッサムシティはどこかおとぎ話の世界のようだったが、今作では地球上のどこかにあるリアリティを持った存在として描かれている。また、映画全体としては明るい昼間の場面が多く、ジョーカーのあけすけで躊躇のない堂々(?)とした振る舞いが、強調されている。決してジョーカーは闇の住人ではない。純粋に自分が行動したいように動くだけだ。他人との利害関係も希薄である。
しかし、この映画ほど感情移入のない作品は珍しいかもしれない。どこまでもその世界を客観視している自分がいた。なのに、すこぶる面白いのである。これは不思議な感覚だ。数多くの悲劇を演出し、その脚本を実行したジョーカーに対して憎悪の気持ちもわいてこない。その突き抜けた、やりきった行為に、価値を見いだしてしまっているのか。金にあかせて武器を開発し、あげくの果てに市民すべてを監視するという違法行為に踏み出してしまう、バットマンとの対比でそう感じるのか。なんとも気持ちの整理がつかない。
長い上映時間だが、すべてのシーンが無駄なくつながっていく。全く飽きることのない時間だった。
ラリっていない、正義感にあふれるゲイリー・オールドマンの刑事というのは新鮮だった。最後まで誰だか気がつかなかったぐらい。余談ではあるがジム・ゴードンが「デスノート」の夜神長官に見えてしょうがなかった(ひげに眼鏡という共通項だけなのだけど)。
まだの人は必見である。

今日は夕飯後、借りていた「レミーのおいしいレストラン」を見た。これもすばらしい映画だった。前評判の高さから期待をしていたのだけど、とても楽しい気分させてくれる一本だ。
そして、クリエイティブな行為にもっとも必要なのは「勇気」だということを教えてくれる。チャンスと幸運な出会いなくてしては、成功につながらない。不断の努力なくしては、前に進むことはできない。
これも、まだの人は必見である。

どちらの映画も、過剰なほどの完成度である。全く手を抜くことなく、粘り強く、それでいて楽しく、そんな現場が想像される。今の日本では、どう逆立ちしたって、同じ予算があったとしたって、まねの出来ない領域の仕事だと思う。
総理大臣が無責任に(思える)辞任をしてしまう国では、望むべくもないことなのかもしれない。でも呆れはしたが、多くの国民は似たような日常を繰り返しているのではないか。本当に粘り強く、地道に、努力し続けていると胸を張れる人間はどれぐらいいるだろうか。もし、たくさんいるのなら、もっと政治に反映されていてもおかしくないのではないだろうか。
つまるところ、楽をしたい人間のほうが圧倒的多数なのだろうなあ。だからといって、それを当然のことだとは、僕は思いたくはない。


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投稿者 corvo : 23:46

2008年8月16日

ポニョ、スカイ・クロラ 2

前回のエントリーの続き。
スカイ・クロラは結論から言うと、僕は好きだ。小説は全シリーズは読んでいないが、最初にこのスカイ・クロラを読み、映像化の話を聞いたときはかなり期待した覚えがある。でも、小説自体はそれほど好きになれなかった。我々の世界と少しだけ似ている架空の世界の話。SFでもなく、現代劇でもない。架空の世界であるなら、想像力の翼を広げて濃密にその世界観を描きそうなものだけど、この作者は抑制した筆致で淡々と、その異常な世界の日常を描写している。もっとも力の入っている描写は、空戦における戦闘機の動きだ。それは映画でも同じなのだけど、地上の世界も映像化しなくてはならない制約があるため、小説とは違ったバランスの世界になっていたように思う。CGをフルに使って描かれる空戦の迫力と同じように、淡々と、しかし少しのざわめきを内包しながら続く地上の日常も、きちんと丁寧に描かれていて映画の世界に没入することが出来た。
ただ、時々さめてしまう瞬間があったのが、個人的には残念だった。これは本当に主観的なものでしかないのだろうけど、クサナギ・スイトが『イノセンス』のアンドロイド(セクサロイド)に見えてしょうがないのである。姓もクサナギだし、バトーでなくても「もとこおお」と叫びたくなった、わけではないが、同じ監督、同じ制作会社だとしても、もう少し差別化は出来なかったのだろうか。バセットハウンド犬の存在もその印象を際立たせてしまう。
はっと見開いた表情のカンナミは、館に迷い込んで電脳ハックされたトグサに見えるし、クサナギの部屋のオルゴールが僕をイノセンスの世界に引っ張ろうとする。声優として竹中直人も参加しているしなあ。

この物語は戦争の是非を問うものでもないし、命の尊厳を謳っているわけでもない。人間がある時期、通らなくてはいけない、甘酸っぱくて、後悔したくなるような現実ばかりの日々や、自分の力不足から、絶対に乗り越えられない壁に向かってもがき続け、苦しみ、傷つき、悶々とする日常や、時には衝動的に自分で自分を痛めつけてしまったり、自暴自棄になってしまう、そんな誰にでもある、ある時代の象徴が描かれているのだと思う。悲劇的なのは、この世界の登場人物がそんな日常を、延々と繰り返さなくてはならないことだ。しかも、何度でも繰り返される死の中で。
もう一度、劇場で見ておきたいかな。そう思わせる一本である。

ポニョもスカイ・クロラもそうなのだけど、人体の描写の不自然なところが目についてしょうがないことがある。デフォルメされていると言っても、あまりに人としておかしなデッサンの狂いを見てしまうと、興ざめしてしまう。
一番大事なシーンのはずなのに、泣きながらカンナミに抱きつくクサナギの表情は、かなりひどかったぞ。一気に感情が爆発するあの場面は、アニメーターとしては描きどころだと思うのだけどなあ。

とは言っても、僕は好きな作品である。

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投稿者 corvo : 02:50

2008年8月15日

ポニョ、スカイ・クロラ 1

昨日、今日と久しぶりに映画館へ足を運んだ。二日続けてアニメ三昧、といっても二本だけど。
昨日(13日)が「崖の上のポニョ」、そして今日が「スカイ・クロラ」。
ポニョが始まる前、後ろの席に座った親子連れが、とても楽しそうにしていた。子供は「ポニョ、ポニョ、ポニョ、魚の子」と口ずさみながら期待に胸を膨らませているのがわかる。しかし、映画が進むに従って、それもどんどん戸惑いに変わっていくのが前の席にいても伝わってきた(といっても僕がそう感じたというだけなのだけど)。最初の頃は劇場から楽しそうな歓声が上がる場面もあったけど、中盤からエンディングまでは水を打ったような静けさであった。終わった後も、ほとんどの観客が無言で劇場を後にしていた、
何とも不思議な気分。僕はいろいろなポイントで楽しめたのだけど、突っ込みどころも多く今ひとつ集中できなかったのかもしれない。海の魚を水道水で飼っちゃいけないだろう。でもポニョには鰓がないので肺呼吸なのかも。でも、それじゃ深海で生活できないか。いやいやフジモトの家には空気が満ちていたしなあ。地上に打ち上げられても、そんなに苦しげな様子もなかったしなあ。そんなことはすっ飛ばして楽しめば良いのだろうけど、「?」がどうしても頭の中に浮かんでしまう。他にはイカの泳ぎ方逆じゃなかったかなとか。ボトリオレピスの目の位置が左右に離れ過ぎだなとか。進化の過程で三本指が五本指に増えるのはおかしいじゃないか、とかどうでもいいところに突っ込みを入れてしまう。半魚人の時のポニョの指が8本ぐらいあるとリアルだったのにな。
リサの運転のアグレッシブさは、まさにカリオストロの城のカーチェイスさながら。最初オートマのようなような描写があったのだけど、途中からクラッチペダルがあらわれたりと、一貫性がなかった(僕の見間違いかもしれないが)。子供が親のファースネームを呼び捨てにするのは、身近な友人親子がそうなので違和感は感じなかったけど、不思議に思う人も多いだろう(特に子供はなんで!?かもしれない)。
ちょっと後悔したのは、「プロフェッショナルの流儀」の「宮崎駿」の回を見るんじゃなかったということ。結構ネタばれ満載だったと思うのだけど。その番組の中で、あるアニメーターが鳥のとぶシーンに宮崎から駄目だしを出されてへこんでいるところがあったのだけど、実際の映画でもそんなにリアリティのある鳥のとび方ではなかった。僕なら駄目だしをするね、と偉そうに言ってみる。
僕が個人的に一番突っ込みを入れたのは最後のシーン、「宗介、お前忘れてるだろう!」。最後までポニョは押し掛け女房っぷりを発揮していたのだった。
声優は所ジョージがヒットでした。

スカイ・クロラは別のエントリーに分けます。


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投稿者 corvo : 01:07

2008年1月24日

なんでこんなに高いの?

このタイトル、川端さんのblogのエントリー「なんでこんなに安いの?」にひっかけたものである。
川端さんのエントリーをきっかけに、僕も久しぶりに「ナウシカ」を読みたくなってアマゾンから取り寄せてみた。川端さんも買いているが、これだけの名作をこの値段で買えるのは本当に安い。

しかし、これがDVDになると高い。アメリカのアマゾンで調べてみると「Nausicaa of the Valley of the Wind (1985)」がほぼ半額である。リージョンの問題があるが、英語の台本を作り吹き替えをいれて、さらに英語字幕までついているのに、日本のオリジナルより安いのである。日本の作品を日本で見るのに、なんでこんなに高いのか?これは他のアニメ作品にも共通している。
日本のアニメ業界の過酷さは、僕が述べるまでもなく良く知られている。日本のアニメが国内で高く売られているにも関わらず、制作者の手にその対価が渡っていないとしたら、一体どこに消えてしまっているのか。

これらの作品に至っては、「Ghost in the Shell SAC Complete 1st Season Collection Box Set (2004)」「Ghost in the Shell S.A.C. - 2nd Gig (Complete Collection) (2007)」4倍以上だ。リリースのタイミングが遅くなるといっても、これほどの価格差の理由が分からない。

必見の名作アニメのひとつ。アマゾンの割引価格ならそれほど高いと思わないが、定価18900円という価格設定はやはり高いと思う。それでも前述の「攻殻機動隊」のシリーズに比べれば、ずっと良心的な価格だ。でもアメリカではこの半額か、さらに安い価格設定がなされるのだろう。
せっかく優秀なコンテンツを生み出しながら、それらを手軽に楽しむことは出来ないのは、とても理不尽に感じる。日本のアニメのDVD、「なんでこんなに高いの?」
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投稿者 corvo : 22:30

2008年1月16日

『ルミネ the ヨシモト』 & 『レンブラントの夜警』

今日(15日)は、昼過ぎまで仕事をし、午後から妻と新宿まで出かけてきた。
父が吉本興業の大株主(嘘。株主ではある)ということで、株主優待券を送ってもらっていたのだけど、その期限が今日までだったので、ルミネ the ヨシモトのライブを見に行ってきた。実家が三重県だったので、土曜のお昼はほぼ例外なく、吉本新喜劇をテレビで見るのが習慣だった。でも、近くに劇場があるわけでなく、ライブで漫才やコント、新喜劇を見る機会というのは全くなかった。
ライブは午後4時から6時までで、前半が漫才、漫談、コント。後半が新喜劇という構成である。
今日の出演者は、藤崎マーケット、ちゃらんぽらん、ほっしゃん、レギュラー、ダイノジ、ロバート。新喜劇は知らない芸人がほとんどだった。やはりライブは面白い。地上波テレビでは、面白さのかなりの部分が薄まっているかもしれない。スポンサーの問題もあるだろうし、ネタの内容にも気を使わなくてはいけないだろう。ライブだと、そういった制約は全て取っ払われる。本来笑いというものはきわどいものだし、綺麗ごとだけではすまないものだ。テレビではあまり面白くないなあと思っていた芸人が、舞台の上ではまったく違った魅力を醸し出していた。
僕自身、初めてだったということもあって、客席から盛り上げることに貢献できなかったのが残念。お客さんは皆おとなしめというか、シャイなのか、特にトップバッターの藤崎マーケットはやりにくそうだった。「ラララライ、ラララライ」は手拍子してあげないとねえ。彼らもテレビで見るよりずっと面白かったですよ。
新喜劇は新しすぎず、古すぎず、幅広い年齢層に対応できる舞台だった。昔の新喜劇みたいな「泣かせる」要素は少なく、知らない芸人が多かったこともあり、とても新鮮に見ることができた。やはりライブはいい。

ルミネ the ヨシモトを出た後、夕飯を済ませて、テアトルタイムズスクエアへ移動。
午後7時30分開演の『レンブラントの夜警』を観るためである。ピーター・グリーナウェイ、レンブラントとくれば、観ないわけにはいかない。理解出来ているかどうかは別にして、ピーター・グリーナウェイは大好きな映画監督のひとりである。ただ、ここ最近のものは観ておらず、『ベイビー・オブ・マコン』か『プロスペローの本』以来だ。また、僕にしては珍しくほとんどの作品を映画館で観ている。
上映が始まって、延々と長い予告編を見せられたのには辟易したけど、オープニングで大写しにされた、『夜警』のアップの映像を観られただけでも大満足だった。ここの映画館は非常にスクリーンが大きい。そこに現れるレンブラントのタッチ、盛り上がった絵の具、これだけで僕には観る価値があった。
この作品は『夜警』を描かれた背景をミステリー仕立てで描いている。ストーリーはグリーナウェイのフィクションではあるのだけど、史実と絡み合いながら、なるほどと思わせるものである。映像のところどころに、レンブラントの絵画の構図が現れる。また、彼の作品と同じく陰影の強い画面。
パンフレットのインタビューでグリーナウェイは、
「映画の最も重要なテーマはなんですか?」と聞かれて、
「”セックスと死”以外に何があると言うのだろうか。」と答えている。
そういった点でも、この作品は分かりやすい。『プロスペローの本」上映時には、画面全体に無粋な暈(ぼか)しが入っていて、その映像の魅力を甚だしくそこなっていたのだけど、『レンブラントの夜警』では、まったく無修正である。レンブラント役のマーティン・フリーマンの勃起したペニスまではっきりと画面に映されている。
一つ残念だったのは、『夜警』の画面に瑞々しさがなかったこと。現在の300年以上たった画面そのものでしかなかった。『夜警」というタイトルは通称であり、『フランス・バニング・コック隊長の市警団』を描いたものだ。絵の表面に塗られたワニスの変色のために画面が暗くなってしまっており,実際は昼間の情景であったことが分かっている。そうであるなら、映画の中でも明るく瑞々しい絵画を観たかったと思うのは、贅沢にすぎるであろうか。
レンブラントの自分の眼の秘密に関する告白(史実にはない)は、晩年の作風を暗示しているようで面白い着眼点だった。
全ての人に勧められる映画ではないけど、レンブラントが好きなら是非。美術系学生は特別割り引きで1000円で観る事ができる。なんとも羨ましい。
もう一度、観に行きたいなあ。
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投稿者 corvo : 02:08

2008年1月12日

試写会『Mr.ビーン・カンヌで大迷惑』

今日は(といってももう昨日だけど)、今年最初の非常勤講師の日。暖かな1日だった。雨が降るかなと思っていたのだけど、放課後は曇ってはいたが降ることもなく、久しぶりにキャッチボールとノックをして汗を流した。気持ちいい。適度な運動は、心も身体も軽くする。

学校を出た後、ミヤモトさんに誘ってもらった映画の試写会に行ってきた。タイトルは『Mr.ビーン・カンヌで大迷惑』。久しぶりに、ローワン・アトキンソンの芸を堪能してきた。
ロードムービーである。コークスクリューも、宙返りもないが、ぎしぎし音のするレールを転がるように走るジェットコースターのような展開。予測不能なスリリングさがあるが、ビーンの行動はいたってベタ。以前から思っているのだけど、ビーンは「憎めないキャラ」ではない。関わってしまった人間にしてみれば「憎んでも憎みきれない迷惑な男」だろう。ビーンの行動原理には子どもっぽい無邪気さなどではなく、大人の持つ悪意がある。不法行為、不正も平気だ。
しかし、ローワン・アトキンソンが若い。以前と変わらぬ動きを存分に披露してくれている。冒頭、愛車ミニに南京錠をかけるところから、笑いがこみ上げて来る。
ストーリーは序盤から伏線がはりまくられている。ただのギャグ映画だと思って油断していると、思わぬところでついていけなくなってしまう。
カンヌ映画祭も舞台になっているのだけど、最高にツボだったのが、ウィレム・デフォー演じるアメリカ人映画監督カーソン・クレイ。カンヌに招待されるぐらいだから有名でそれなり実力もあるという設定なのだろうけど、作った映画はナルシシズムバリバリのオレ様映画。勘違いした芸術的映像表現のオンパレードで、台詞は全て主役を演じる監督クレイの独白ばかり。「Nothing. Nothing. Nothing ・・・・」が聞こえる度に笑えて笑えて。細かいディテールについては見てのお楽しみに。ビーン自身は懸賞に当たって、副賞のビデオカメラとともにカンヌを目指すのだけど、彼が旅の途中撮り続けていた映像が、きちんと物語のクライマックスへと繋がっていくのが見事だった。DVDが出たら買いの一本。気に入りました。
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投稿者 corvo : 00:47

2007年5月30日

『300』

「さんびゃく」もとい「スリーハンドレッド」。打ち合わせの後、ミヤモトさんに誘っていただいた試写会に、九段会館まで出掛けて来た。上演15分前にはほとんどの席が埋まっており、二階席のほんとにすみっこのほうから見ることになってしまうほどの盛況ぶり。注目度の高さが伺える。試写会だというのに映画の宣伝が長い。ここですでにうとうとし始める。いつ映画が始まったのかわからないいうち、頭が朦朧としてきて10分ほど寝落ちしてしまった。率直に言って駄作である。リアリティのかけらもない映画。
戦闘シーンではストップモーションをやたらと使うのだけど、これがなければきっと映画の長さは2/3ほどになっただろう。残酷な戦闘が延々と続くのだが、まったく痛みを感じない。これは描写としてまずいだろう。ほとんどがCGでつくられているのだと思うが、肉体を感じないバーチャルな現象にしか見えてこない。簡単に手足が落ちる、首が飛ぶ。人間の身体は、そんなに簡単に切れる物ではない。ましてや何十人も、何百人も、切り続けて、常に手足を切断できるなどということはない。そんなシ−ンが馬鹿馬鹿しいほど続くのである。それは、サム・ペキンパーが描いたストップモーションによる暴力シーンとは似て非なる物で、まったく表現として幼稚でどうしようもないものだった。ちょっと期待していただけに、がっかり。(モンティ・パイソンのサム・ペキンパーのパロディを思い出してしまったよ)
戦地に赴くのに、兵糧も持たずに300人が移動する。着いた戦地は作物などまったくないような海岸線。水はどうしている?食料はどこから持って来た?スパルタの兵士たちは、常にやる気満々、元気一杯。鍛え上げられているとはいえ、無尽蔵の体力である。ミヤモトさんも指摘していたのだけど、とにかく字幕が読みづらい。背景にとけ込んでしまうことがしばしば。シナリオも単調で、台詞もよくないので、読めなかったところで大勢には影響なかった。
これが「世界各国でNO.1大ヒット記録、続出中!!」。本当の話ですか?もし事実なら、そうとうに狂っている。

試写会の後、神保町まで歩いていき、僕が時々行くタイ料理屋でミヤモトさんと遅めの夕食。ここは本当に美味しくて、本格的なタイ料理を食べる事が出来る。値段もリーズナブルで、いくつかの料理に、ビールを一杯、デザートも頼んで、お腹いっぱいになって、一人2500円ほど。小さな店だけど、清潔感もあってお勧めです。
タイ料理マプラー 」
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投稿者 corvo : 02:33

2007年3月 7日

硫黄島からの手紙

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預金出納帳の記入が終わりました。全体としては、まだ半分ぐらい残っていますが、応援よろしくお願いします。
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以前のエントリーにちらっと書いたのだけど、先週の木曜日、映画の日を利用して「硫黄島からの手紙」を観てきた。
非常にシンプルな映画である。戦闘シーンの描写には容赦がない。きわめて乾いた視点で描かれている。戦争で死んでいくことは悲劇でしかないことは自明の理であるが、どんな戦争にも「名誉の戦死」などあるわけがない。
硫黄島では多くの若い世代が犠牲になった。今、存命であれば70代、80代の好々爺になって、孫との生活を楽しんでいただろう。僕たちの世代にも多くのことを教えてくれたかもしれない。そんな人たちを、死に追いやってしまった戦争であったことは間違いない。
硫黄島での状況は、僕自身は組織に身を置いたことがないので想像するしかないのだけど、そこに「死」がないだけで今の日本の会社や役所、さらには社会の抱える問題と大差ないのではないだろうか。これ以上、戦争をすることが馬鹿げていると知りながら、本土を守るには硫黄島を死守しなくてはならないという論理的な結論のために、最善策をとり必死に戦った兵士たちに同情を禁じ得ない。当時の日本は大局的に最善策をとらず、そのゆがみを硫黄島という局所が引き受けて多くの人間が最善を尽くして死んでいったのである。
今の日本もそこかしこで、同じ事をしているように思えてならない。

うまくまとめられなかったので、また書くかもしれません。
源泉徴収票を整理して、これは戦費調達のために制度化されたものなのだよなあと思いながら、帳簿をちまちまと作成しています。

投稿者 corvo : 22:59