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2013年9月26日

日本美術解剖学会・2013年関西大会レジュメ


開催がもう明後日と迫ってきました。2年ぶりの関西大会です。

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日本美術解剖学会・2013年関西大会
2013年9月28日(土)13:00~16:00

当日のプログラム

12:30~     受付開始
13:00~13:05 挨拶
13:05~13:20 基調講演1 『形の大小』 河部 壮一郎
13:20~13:25 インターバル
13:25~13:40 基調講演2 『デジタルと美術解剖学』 吉田 雅則 
13:40~13:45 インターバル
13:45~14:00 基調講演3 『科学普及の観点からみた美術の魅力』 荻野 慎諧

14:00~14:10 休憩

14:10~14:25 基調講演4 『馬の画家・ジョージ・スタッブス』 布施 英利
14:25~14:30 インターバル
14:30~14:45 基調講演5 『人体の中の動物』 坂井 建雄
14:45~14:50 インターバル
14:50~15:05 基調講演6 『動物の遺体をモチーフに作品を作る』 小田 隆

15:05~15:15 休憩

15:15~15:55 質疑応答
15:55~16:00 挨拶

16:00~17:00 ANIMAL展・ギャラリートーク

17:00~19:00 懇親会 カフェテリア結


基調講演1
『形の大小』
岐阜県博物館 古生物担当 学芸員 河部壮一郎

 形態とは形状とサイズを合わせたものである。形状とだけ言えば、そこにはサイズ情報は含まれない。例えばA4の紙二枚を用意して、それぞれの用紙いっぱいに子どもと大人の体の輪郭を描いたとする。子どもも大人の体もA4いっぱいに描かれており同じ大きさになっているということは、そこにはサイズ情報はない。つまり形状のみが表されているのである。我々、形態学者は形状に騙されることなく正確に形態を見極める必要がある。生物の形状はサイズによってある程度制限される。わかりやすい例は成長だ。成長に伴い、生物の形状が変化するのは直感的に理解できる。成長という現象以外でも、生物はその長い進化の過程で、様々な要因によってサイズを変化させてきた。こういったサイズ変化は形状をも変化させる。サイズに伴う形状の変化は、なにも外形だけにとどまらない。体の内部でも形状の変化は起こるのである。脳ですら、サイズによってその形状が規制される。脳形状がサイズに伴って変化するという研究例を紹介し、いかに我々がものを見る際に形状とサイズという両者の関係を正しく認識する必要性があるのか述べたいと思う。

基調講演2
『デジタルと美術解剖学』
神戸芸術工科大学 映像表現学科 准教授 吉田 雅則

近年、映像作品におけるキャラクター表現はめざましい進歩を遂げている。
映画の中で本格的にCGが使用されるようになってからわずか30年余であるが、現在では、手間と時間を惜しまなければ、そこに登場するキャラクターや動物を専門家が一見しても、もはや実物と区別がつけ難い程に技術が進んだといって良いだろう。
こうした進歩はコンピュータサイエンスの発展と切っても切れない関係にある。
キャラクターの造形(モデリング)方法一つをとってみても、従来は「線」「点」「面」の移動、スケール、回転によって形状を定義するより他の方法はなかった。しかし現在では、ハードウェアによる演算速度の向上やソフトウェアの充実により、実物の粘土のように直接「量」を扱い、形を編集することが可能なツールが一般的になっている。
また、キャラクターを動かすための仕組みも、従来は骨に直接表皮をバインドし、それをドライブする方法がとられていたが、現在では骨から筋肉、皮膚へと動きを伝え、中間に存在する組織同士のズレや重力によるたわみ、までを表現する事が珍しくなくなっている。
そうした技術の進歩はもちろんのこと、それを支えるアーティストの不断なき観察や探究心にもスポットを当てられる機会も増えている。

デジタル技術は未だ過渡期にある比較的新しい表現手法であり、常にアートとエンジニアリングの両サイドの視点が必要とされる分野だ。


基調講演3
『科学普及の観点からみた美術の魅力』
㈱ActoW/兵庫県立大  荻野慎諧

 古生物学者の主とする事業の一つは,化石となった「ホネ」などを発掘し,それに名前を付けて公表することである.だが,化石の一部を手にして発表しても,それがどの部分であるかを説明するのは難しく,なかなかお茶の間には伝わらない.この問題を解決するために生前の姿を「復元」する工程が必要となるが,古生物学は,この際にアートと深く関わることになる.復元作品が制作されるメリットは大きい.ただ単にビジュアル的に理解が得られるだけでなく,メディア報道等においてもより目立つこととなり,露出に大きく影響するからである.ここには,科学ファン層がある程度飽和している状況下で,さらなる科学普及を推進するためのヒントがあると考えられる.今回の発表では,科学と芸術という2つの分野が古生物学を介して結び付き,普及活動を促進する事例を紹介しつつ,協力関係のさらなる深化を模索したい.


基調講演4
『馬の画家・ジョージ・スタッブス』
東京藝術大学美術学部 美術解剖学 准教授 布施英利

  ジョージ・スタッブス(George Stubbs, 1724 年~1806 年)は、馬を描く画家として 知られている。
 若い頃は肖像画家などをしていたが、病院で解剖学も学んだ。さらに30歳の頃には、なんと農家を借りて18ヶ月間も、馬の解剖に没頭した。そんなふうに、 馬の骨格と筋肉など知り尽くし、その上で、馬の絵を描いた。
 馬の絵画や彫刻は、ラスコー洞窟壁画から、さまざまな騎馬像、ピカソの『ゲルニカ』 まで多くある。そのなかでジョージ・スタッブスの描く馬は、図鑑と絵画の中間にあるような、つまり科 学と芸術をつなぐなにかを湛えた、観察と創造がほどよくミックスした絵だ。他にない、ひとつの世界をもった、「馬の画家」なのである。


基調講演5
『人体の中の動物』
順天堂大学医学部 解剖学・生体構造科学 教授 坂井建雄

 人間の身体と動物の身体は、明らかに違うけれどもどこか似ている。我が家の飼い犬と目が合うと、何事かを訴えかけてくるように感じられるのは、身体の造りにおいても共通性があるからである。人間は直立したために、脳を含む頭が異様に大きくなっている。脊椎動物として共通する身体の造りは、頭と脊柱からなる体幹、そこから突き出た体肢(ないし鰭)である。頭は、すべての脊椎動物に共通する基本的な要素であり、最初に生じた脊椎動物にまで遡る長い歴史を持つ。頭には脳だけでなく、顔がある。顔は身体における「窓」である。一つには感覚情報をとり入れる窓(眼・耳・鼻)であり、もう一つには物質をとり入れる窓(口・鼻)である。発生のごく初期の身体を見ると、頸のあたりで前後に並ぶ膨らみと溝があり、鰓弓と呼ばれる。魚ではここから鰓が生まれるが、人体では鰓弓から生じた骨格・筋・神経が、頭と頸の中に隠れている。脊椎動物の頭は、体幹の延長が基礎になり、その上に特殊感覚器(眼・耳・鼻)と鰓弓が重なってできあがっている。


基調講演6
『動物の遺体をモチーフに作品を作る』
成安造形大学芸術学部 イラストレーション領域 准教授 小田 隆

古生物の復元は、発見された化石から始まる。特に脊椎動物では、骨格の断片が重要な要素のひとつとなる。すでに死んでしまって化石となり、全体像を知るには不完全な証拠から、生きた姿を復元していくことになる。化石や論文から得られるものは小さくはないが、現在生きている動物を参考にすることも必須である。そんな経験から現生生物の骨を描くことに興味を持ち、作品を作り続けている。今回『ANIMAL』に出品している「アジアゾウの死産胎子」のモチーフは骨格ではないが、液浸にされた皮膚も筋肉も内蔵も残された遺体である。どうして、それを描こうとしたのか?骨を描くこととの違いは何か?古生物の復元にどう活かされているのか?生きた動物を描くこととの違いは何か?それらの点について制作のプロセスを交えながら紹介したい。


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投稿者 corvo : 2013年9月26日 23:43