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2010年6月 3日
『アンドリューNDR114』
結末を知っているからこそ、序盤から涙があふれる希有な映画しれない。物語は究めてシンプルで奇をてらったところはどこにもない。どんでん返しもないし、大きな抑揚があるわけでもない。きわめて淡々と時系列で進んでいく。もし、この流れの中に過去を回想するような場面が挿入されていたら、一気に興ざめしただろう。初見であっても十分に予測できる結末は、安心して見ていられる。
僕が最初に見たのは数年前なのだが、実を言うと主人公のアンドリューに嫉妬したのを覚えている。このアンドリュー、大量生産された家庭用ロボットのひとつに過ぎなかったのに、ひょんなことから芸術的才能を発揮させる。それだけなら嫉妬することもないのだが、ロボットであるがゆえに寿命に制限がなく、徹底的に自分の技量を高めていくことが出来るのだ。
かつて葛飾北斎がこう言っている。
「私は6歳より物の形状を写し取る癖があり、50歳の頃から数々の図画を表した。とは言え、70歳までに描いたものは本当に取るに足らぬものばかりである。(そのような私であるが、)73歳になってさまざまな生き物や草木の生まれと造りをいくらかは知ることができた。ゆえに、86歳になればますます腕は上達し、90歳ともなると奥義を極め、100歳に至っては正に神妙の域に達するであろうか。(そして、)100歳を超えて描く一点は一つの命を得たかのように生きたものとなろう。長寿の神には、このような私の言葉が世迷い言などではないことをご覧いただきたく願いたいものだ。」
長く生きれば良いという単純なものではないが、集中して枚数を重ねていきたいものである。
投稿者 corvo : 2010年6月 3日 02:36