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2008年12月14日

言葉にすることの危うさ

先日の授業で、ある生徒にアドバイスを求められて話しをしたときの出来事。
「ここの背中のラインがおかしいと思うなあ」
「もっとなめらかにすればいいですか?」
といったやりとりだったのだけど、「「なめらかに」という言葉を使うべきではない」という話しをしたのだった。
まず、「なめらかに」という言葉を発してしまう以前に、その背中に構造としてなにが含まれているのかということを考えなくてはいけない。横からの角度だったので、肩甲骨が目立つ。また、左右の肩甲骨に挟まれた僧帽筋も重要である。首から背中にかけての脊椎のつながりも意識出来ていないと、きちんと身体の中心に首がつながらなくなってしまう。そういったもろもろの情報を描いていった上で、「なめらかに」見えるようになるのであれば、なんの問題もない。それを最初に「なめらかに」という言葉で縛ってしまうと、ぼろぼろと多くの情報が抜け落ちてしまい、描き込む事が出来なくなってしまう。
漫画のキャラクターのように「太った」「やせた」などと単純化することで、より明確にするときには、言葉で記号化することは有効な手段であるが、デッサンやクロッキーにおいては出来る限り避けなくてはならない。
漫画やアニメのキャラクターのようなものは、すらすら描けるのに、実際のモデルを目の前にすると、とたんに手の動きが鈍ってしまう学生も多い。人体の持つ、膨大な情報量を上手く整理して捉えきれていないように思うことがしばしばある。美術解剖学はそういった点でも、有効なツール、考え方のひとつになる。
きちんと学生は分かってくれたので良かったが、これからも繰り返し伝えていく事が必要だろう。


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投稿者 corvo : 2008年12月14日 23:06