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2008年11月 5日

中国出張4日目

月曜日は朝から工場でふたたび作業。夕方には広州へ移動するため、”無駄にゴージャスなホテル”を朝のうちにチェックアウト。
日曜日は工場での作業がストップしてしまっているため、修正自体は進んでいない。土曜日終了時点のままである。以前だと朝くる頃には劇的に変化した状態を見ることが出来たのだけど、これからはもう望むべくもない。
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スタッフたちの作業風景。事前に指示を出してあった部分を、どんどん進めてもらう。
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大雑把ではあるが、おおよそ出来上がった頸椎から尾椎までの体幹部分。
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頸椎。仕上げと右側面の修正はこれから。
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胴椎と肋骨。肋骨の角度と、連続した形の移り変わりに注意して仕上げてもらうよう、指示を出してきた。
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骨盤と尾椎。上から見ると肋骨、腸骨、尾椎は連続して流れるように、その形を変化させていく。ひとつひとつの骨の形を正確に作っても、それぞれの関係がぎくしゃくしてしまっては、生き物の骨格としておかしなものになってしまう。
指示書作りの課題もいろいろと見えてきた。
中国の造形師たちは仕事熱心だし、手先も器用で、その技術力はきわめて優れている。僕のような立体造形の素人にしてみれば、とてもまねの出来ないレベルだ。でも、何かが足りない。食玩のように、すでに原型のあるものを生産することは得意中の得意であるが、一からデザインするとなると全く違ったスキルが必要になる。今回のような骨格モデルを作るには、手がかりになるのは僕の指示書や論文の図版、写真資料などである。ただその指示通りに作ろうとしても、二次元の情報だから欠落してしまっているものがある。そこをどう補って、資料から必要な情報を読み取るかということが問われてくる。これらのスキルを彼らに要求するのは難しいというよりも、ほとんど無理である。
一番の問題は、彼らが恐竜の化石の骨格や、動物の骨格を実際に見たことがないことである。彼らは純粋に造形物を作る職人として雇われている。企画やデザインに普段から関わっているわけではない。職人としての技術を通して、高い理解力や造形力を有してはいるが、アカデミックな造形の訓練を受けているわけではない。博物館にも、美術館にも、動物園にも、おそらく行ったことがない。工場のある街には、そのいずれの施設も存在しない。従業員は会社の用意した寮に住んでいるので、ほとんどの時間を職場との往復だけで過ごすことになる。
僕らが依頼をしている模型の制作は、工場にしてみればほんの一部の業務である。人的にも、時間的にも、多くを割いてもらうことは、当然のことながら出来ない。興味を持った造形師が、博物館や美術館に行ったり、高価な専門書を入手しようとしても、経済的にかなり難しいと思う。ましてや海外の博物館に遊びにいったり、SVPに参加することなど、夢のまた夢である。中国人がそれだけのことが出来るようになったら、僕の出番なんかなくなってしまうのかもしれないけど、理想的にはそこまで出来るようになってほしいと、淡い期待を持っている。

一つ前のエントリーにも書いたが、日本にも似たような状況はいまでも残っている。A-WINGさんのエントリーで紹介されていた、「お前らの作品は所詮コピーだ」――富野由悠季さん、プロ論を語るに通じるものを感じる。

考えて考えて考え抜いて、身体を、手を動かし続けることで、ようやくほんの少しだけ積み上げることができる。ものを作る仕事とは、そういったものなのである。どこにも錬金術はないのだ。

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投稿者 corvo : 2008年11月 5日 22:00