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2008年10月27日
SVP 68th Annual Meeting まとめ
更新の間がのびのびになってしまているせいもあるが、すでにSVPが終了して一週間以上がたっている。帰国してから時差ぼけのため、どうにもリズムの悪い生活が続いていた。
クリーブランド博物館の写真はここでも紹介したが、ふらぎ雑記帳でさらに多く掲載されている。日本の博物館との比較を少し書いてきたが、クリーブランドの博物館を始め北米の博物館には、真新しい展示や驚く仕掛けがあるわけではない。もともと化石標本などが豊富にあるのだろうが、極端に多くの予算がかけられているとも思えない。ただ、ひとつひとつの展示が愚直なまでにまじめに、丁寧につくられていると感じることが多い。デザイナーがそれぞれの展示物の内容を良く理解しており、より効果的になるよう地道に試行錯誤をくりかえしているのではないだろうか。やはり、博物館にデザイン部門が存在していることが大きいのだろう。一方、日本の博物館には、そういった仕組みはない。外注のデザイナーは、展示物を深く理解しないままにデザインしてしまうことになる。
アメリカの街や雑誌、テレビ番組を見ていても、特別にデザインセンスが優れているとは思えないことがある。しかし、きちんと時間とお金をかけて、優れた人材を投入した分野では、素晴らしい表現が生まれてくる。
彼我の差を痛感せざるを得ない。
William E.Scheele作品の展示。僕は知らないイラストレーターだったのだけど、アメリカでは非常に有名で子供向け自然科学出版物を数多く出しているらしい。実際、彼の著書に触れたことで、自然科学の道を目指した人間も少なくないということだった。博物館が敬意をもって、このような展示をしていることに、嬉しくなってくる。
SVPに参加することで、たくさんの知人友人に巡り会うことが出来て、年々楽しいことが増えている。まだ直接仕事につながったりするようなことはないが、今年はポスター発表も出来たし、ささやかではあるが新たな一歩を踏み出せたと思う。英語をなんとかして、もっと円滑にコミュニケーションをとれるようになることが最大の課題だ。
若手研究者や学生にとっては、もっと熾烈な闘いの場でもある。のんびりと僕ら用に交流を楽しむというわけにはいかない。お酒を飲みながらの和んだ雰囲気ではあるが、ポスターセッションの場では緊張感のあるやりとりが行われることもある。特に自分の研究テーマと近かったり、それ以上の内容の発表があると、気が気ではない。実際にそんな状況をまのあたりにしたが、長年温めてきた研究テーマと重なっていたら、落ち込む気持ちはよく分かる。
また、学生にとっては共同研究者や留学先を見つけたりといった、人脈を広げる場としても機能している。多くの日本の学生はSVP終了後もしばらく北米に滞在して、調査、研究等を積極的に行っている。
日本の古生物を取り巻く状況は、若手研究者や学生の努力によって、確実に良い方向に向かっている。
楽観できることばかりでもないが、悲観的になって歩みを止めてしまうことは、最もよくないことだ。
来年のブリストル、やはり行くしかないかな。せっかく良い方向にむかいつつある流れを断ち切らないためにも
。
広く、正しく「古生物の復元」を理解してもらうためにも、まだまだやらなくてはいけないことは数多い。
今年もそんなことを実感したSVPだったのでした。
投稿者 corvo : 2008年10月27日 10:34