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2006年11月14日
ダブル世界タイトルマッチ-日本武道館
昨日の夜は、日本武道館へボクシングを見に行ってきた。テレビで見るのは好きで、詳しいというほどのことはないのだけど、子供のときからテレビ観戦で親しんできたスポーツの一つである。実は生で見るのはこれが初めて。仕事でも大変お世話になっていて、プライベートでも友人である、平山廉さんに誘われて初観戦となったのである。平山さんは大変なボクシングマニアで、まだ無名の選手にも造詣が深い。色々教えてもらいながらの観戦。
会場に入った頃は、まだまだ客が少なく空席が目立つ。
この日のプログラム。
フライ級6回戦
五十嵐俊幸 vs. 明在成(韓国)
S・バンタム級6回戦
下田昭文 vs. ソニー・ゴンザレス(フィリピン)
フェザー級6回戦
粟生隆寛 vs. ガブリエル・ペレス
ここまでは前座なのだけど、将来が嘱望される選手たちということで、見応えのある試合が続く。順当に日本人選手が、全ての試合に勝利した。
6回戦といっても、本来はタイトルに挑戦できるレベルの選手の試合もあり、プロボクサーとは凄いものだと実感したのだけど、そんな感想も次のタイトルマッチ2戦でぶっとんでしまった。
世界タイトルマッチともなると次元が違う。
まず、最初に行われたのが、WBCミニマム級タイトルマッチ12回戦。
イーグル京和 vs. ロレント・トレホ(メキシコ)。序盤はイーグルが完全に試合を支配していた。打つそぶりも見せずに、ノーモーションで打ちおろす右が、ことごとく挑戦者にヒットする。3回にはダウンを奪いKOは時間の問題で圧勝かと思われたが、次のラウンド以降、急にペースが落ちた。手数も少ない。そして6回、挑戦者の振り回すような大降りの右フックが、イーグルにクリーンヒット。たまらずダウン。少し休んでから立ち上がる余裕があったが、明らかに効いている。再びダウン。会場が騒然としだす。序盤、稼いでいたポイントの差がみるみるなくなっていく。終盤、挑戦者も疲れたのか、お互い倒しきることは出来ずに判定へ。辛くもイーグルが逃げ切り、防衛に成功という結果だった。僅差ではあったが、技術の差は歴然で、試合を優位に進めたのもイーグルだった。しかし、薄氷を踏むような勝利だったことは間違いない。
でも、疑惑の入り込むような内容ではなかったと思う。ホームタウンデシジョンに救われた部分もあったかもしれないが、前座とは比べ物にならないほどのプロフェッショナリズムと、技術の高さを見ることが出来た。
今日になって報道で知ったのだけど、3回のダウンを奪ったときに右の甲を痛めていたらしい。激痛を抱えながらの勝利だったのである。
そして、もうひとつのメインイベント、WBC世界バンタム級タイトルマッチ12回戦。
長谷川穂積 vs. ヘナロ・ガルシア(メキシコ)。この試合も序盤は長谷川が圧倒的に支配する。速い。見えないパンチがいくつかある。相手がぐらつかなくては、打ったことすら分からない。ディフェンスも素晴らしい。挑戦者のパンチはむなしく空を切る。圧勝で序盤に決着がつくと思われたが、挑戦者ガルシアが本当にタフだった。何発まともにもらおうとも、倒れない。ようやく6回に、今まで一度も出さなかった左のアッパーで、挑戦者のダウンを奪うのだが、この中盤から雲行きが怪しくなる。まず、相手の有効打で左のまぶたをカット。次は偶然のバッティングで右目の上をカット。血が流れて、明らかに見にくそうだった。そんな中8回には右フックで再びダウンを奪う。これで決まりかと思ったのだが、挑戦者は再び立ち上がり前へ前へと出てくる。長谷川も捌ききれず、打ち合いに応じる格好になってしまう。
楽勝と思われた試合がファイナルラウンドまでもつれ判定になるとは、序盤の展開では思いもよらなかった。前半の大きなリードと、2度のダウンを奪ったことで、倒されない限りは勝利であることを確信していたが、圧巻はファイナルラウンドだった。倒すしかない挑戦者が突進してくる。最初は少し打ち合う場面もあったが。途中長谷川はノーガードで、挑戦者のパンチをよけ始める。あたらない。全くあたらない。身体を入れ替えながら、上半身を柔らかく使って、紙一重でよけていく。会場は俄然、盛り上がる。ディフェンスの技術の粋を見せられて、歓声が沸き上がる。ノックアウトだけがボクシングではない。そして、計ったように最後の10秒間に、壮絶な打ち合い。ノックアウトは奪えなかったが、最高に痺れる試合であった。最初にしてこれほどのボクシングを見ることが出来るとは、幸せである。
タイトルマッチは国歌斉唱があるのだけど、ミニマム級タイトルマッチの国歌斉唱に上がったのが、Jの頭文字の事務所所属でローラースケート履いて歌っていたメンバーの一人。大丈夫かなあと思っていると、かなり厳しい。そこら中から失笑がもれる。最後のフレーズ「こ〜け〜の〜」で調が変わったかと思うほどの外しっぷり。近くにいた関西から来たと思われる男性が「へったくそやのおお」。イーグルの苦戦は、この歌のおかげで三半規管にダメージを負ってしまったのかもしれない(もちろん冗談)。タレント連れてくるのはいいけど、ちゃんと歌唱力のある人間を連れてくるべきだろう。F1の国歌斉唱も、酷いのを聞かされたことがあったなあ。次から、ちゃんと歌える人を呼んでください。お願いします。
これほど良い試合だったというのに、空席が目立ったのは残念だった。月曜日の夜だったことも災いしたのかもしれない。それにしてもテレビの扱いは酷かった。どちらのタイトルマッチも録画だった。リアルタイムに、生中継するべきだろう。でもゴールデンに枠をとれるほどの力がないのでしょうね。だらだらと生い立ちを流して、世紀の凡戦を見せつけるテレビ局もあるというにのに。重ね重ね残念。
会場で電撃ネットワークの南部虎太氏を見かけた(けっこう近くの席でした)。かなり熱心に観戦していて、ボクシングファンなのだろう。握手してもらえば、よかったかな。
投稿者 corvo : 2006年11月14日 23:10