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2006年7月22日

NHK公開セミナー「NHKスペシャル・恐竜VSほ乳類」

21日金曜日、朝から幕張の恐竜博へ出かける。これまでレセプション、シンポジウムとイベントがあったため、じっくりと展示を見ることが出来ていなかった。なので幕張に行くのはこれが3回目。その後、千葉県立中央博物館へ企画展「驚異の深海生物」を見にいったのだけど、これらの模様は後日、別のエントリーで書こうと思う。

そこで、今回のタイトル”NHK公開セミナー「NHKスペシャル・恐竜VSほ乳類」”について。千葉県立中央博物館を出た後、友人たちと車で千葉市内の会場へ向かう。近くの食堂で別の友人と合流し、早めの夕食をすませてセミナーに臨んだ。最初にはっきり言っておくが、「たいへんつまらない」セミナーであった。
今回は対談という形をとっており、北海道大学総合博物館助手の小林快次氏とNHKチーフプロデューサーの高間大介氏である。このプロデューサーの高間氏は、以前古生物学会で講演し、僕から突っ込まれた際まともに質問に答えず目が泳いでいた御仁。
開場午後6時、開演午後6時30分、終演午後8時30分という遅い時間でのセミナーで、子供たちにはつらい時間帯である。通常であれば、家で夕食を食べ、お風呂に入り、寝る支度をする。そんな時間に頑張って、多くの子供たちが参加していた。
開演後、のっけから驚く。対談が始まったのではなく、いきなり地上デジタル放送の解説である。「NHKスペシャル・恐竜VSほ乳類」の映像を使っているのだけど、内容は地デジの広報以外の何物でもなかった。これが延々15分も続く。配布されたパンフレットにも、そんなことは何も書いていない。
地デジの説明の後、ようやく対談がスタート。どこまで打ち合わせてあるのか、どういった進行になるのかが見えてこない。司会も進行役をするわけでなく、対談というより高間プロデューサーのおしゃべりとスライドショーが続く展開。このかた、自分は裏方と言いながら、実は出たがりの喋りたがりだろう(と僕は勝手に思っている)。前回の番組の時のCGよりも格段に質が上がっているということを強調している。監修の小林氏(ふだんは小林君とよんでいるのだけど)の協力で、非常に質の高い物になったことを、前回のアロサウルスと比較しながらの解説。まあ、比べる対象があまりにあんまりなので、確かに良くなっているのだろうが、依然、骨格的特徴からは大きく外れており、まともな復元とは呼べない。眼穿の前にある涙骨突起はなく、眼穿の上に大きな張り出しがついている、まるでティラノサウルスのよう。前肢の3本の指は同じ長さで、関節も同じ数か。恐竜の場合、第一指から2、3、4と指骨の数が増えなくてはいけない。中手骨の長さも太さもそれぞれ違う。それらの情報は、まったく反映されていない。
他にも指摘を受けた例として、スーパーサウルスの口の動かし方を上げていたのだけど、最初、ほ乳類のように下あごを左右に動かして咀嚼させていたのである。これはジュラシックパークに登場したブラキオサウルスの間違った復元として、とても有名な事例である。そんなことをスタッフも、このプロデューサーも知らなかったのだろうか。奥歯のない顎でどうやって咀嚼するというのか。
まあ、こんな感じでとりとめもない話が続くのだけど、このプロデューサー自慢話が結構好きである。今回の番組が世界中の研究者から注目されていて、ビデオを送ってくれという注文が寄せられているらしい。それって、反面教師とするため?これだけ突っ込みどころ満載なら、「べからず集」としては優秀なコンテンツであろう。
今回の対談のつまらなさに、小林氏の責任はなかったと思う。彼は出来るだけ誠実に、言葉を選んで答えようとしていた。
このセミナーの特筆すべき点は、2時間という長丁場に関わらず、一度も休憩がなかったことである。子供たちもたくさん来ているのに!僕は我慢できず、トイレに行くために中座してしまった。司会者なり、プロデューサーなりが、気を使って休憩をいれるべきである。「皆さん、休憩とらなくて大丈夫ですか?」そんな一言もまったくなかった。
質疑応答の時間がかなりあったのだけど、ここでも驚くべきことが起こった。最初の質問に対して、高間Pは延々15分も喋り続けたのである。詳しくは書かないが単純な質問である。「はい」か「いいえ」で答えられるようなものである。それを自分の考えにもなっていない考えを、貴重な時間をつかって披露したのである。何を言ったか記憶にも残っていない。今回、僕は質問をしなかった。手も挙げなかった。たくさん来ている子供たちに質問のチャンスが廻ることが大事だと思ったからだ。壇上で答える人間は、的確に答え、できるだけたくさんの質問者にチャンスを与えるべきである。彼はそれをしなかった。また、司会者もコントロールしなかった。最悪である。
この場に同席した友人たちも、同じような感想であった。不適材不適所。きちんと科学を理解し、自然に敬意を払い、ユーモアがある。そんな人に番組を作ってほしい。切に願うばかりである。

このセミナー、僕の記憶が確かならまったく笑いがなかった。なんてこった。
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投稿者 corvo : 2006年7月22日 01:06