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2006年7月31日

理想のクロッキー会

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先日のヌードクロッキーのエントリーは、多くの反響があった。コメンターの一人である「失敗だらけだフニャさん」のblog「芸術的イエローカード」のエントリーでも、今回の顛末について取り上げていただいた。コメントを残してくれた人は、僕の主旨に賛同してくれる人たちばかりだったのだけど、mixiコミュの掲示板では反対の意見もあった。「コミュニケーションの方法」に対する意見である。「その場では声を出さず、主催者にだけ伝えるべきだ」「皆の前で声を出すことで、参加者が萎縮してしまう」こんなところである。
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この話題は今回で終わりにするが、では、どうすれば理想的なクロッキー会になるのか。
明確なルールを示して、参加者に周知徹底してもらことだ。
ルールといってもたいしたことはなくて、次の3つぐらいあれば大丈夫なはずである。
1.遅刻しない。遅刻した場合は、休憩時間になるまで待つ。
2.モデルのポーズ中に入退出しない。
3.モデルへの挨拶をかかさない。
こんなところかな。これを読んでみるとはっきりするのは、ごく日常的にまもらなくてはいけないことばかりだ。「モデルのポーズ中」というのは特殊な状況かもしれないが、学校の授業や仕事の打ち合わせで遅刻したり、途中で入退室することがルール違反であることは明白である。もちろん体調不良など、やむをえない場合はその限りではない。
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特にヌードクロッキーの場合はプロのモデルを使うのだから、開催の方法はプロに合わせるべきである。これは何も難しいことではなく、ルールをより明確にシンプルにするために必要なことである。クロッキーには、これまで連綿と続いてきた歴史があり、方法がある。僕もそれに倣って、クロッキーを行い、モデルへ接してきた。これを知らないアマチュアを基準にしようとすると、様々な弊害が出てくる。アマチュアにはアマチュアの数だけ、ルールと方法論が存在してしまう。毎回、この基準に合わせるなど、到底無理だろう。だから、プロの基準に合わせるべきなのである。
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一般の人が参加するクロッキー会には、悲しいかな興味本位で来ている人もいるという。だからこそ、きちんとしたルールを示して、それに従えない参加者は排除していくしかない。参加費を集めるために、多くの人に参加してもらう必要があるかもしれないが、最低、何人集まればペイできるかという線がはっきりしていれば、むやみに人集めに走ることもないだろう。その線をもとにして、多く人数が集まれば、参加費を安くすることもできる。
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芸術表現には、様々なものがある。舞踏、音楽、美術、文学等々。そんな中でも美術表現は、もっとも自由度が高いかもしれない。しかし、これには弊害も多いと僕は考えている。舞踏で先生の言うことを聞かずに自由に踊ったら、怪我をする危険性がある。身体の故障によって、将来の望みを絶たれるかもしれない。正確な指の運びができなければ、楽器を演奏することはできず、歌うには正しい発声も必要である。文章を書くためには、文法を理解していなくてはいけない。こういった基礎的訓練の部分が、美術だけないがしろにされていると感じている。
絵を描くにも正しい姿勢がある。正しい道具の使い方がある。基礎的な訓練を積めば、その先にある自由を手に入れることができるのに、最初から自由、自由では、表現手段の選択肢が少なくなってしまい、何も出来なくなってしまう。
基礎的な訓練の大切さを、クロッキーを通してあらためて実感したのである。
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投稿者 corvo : 11:59

2006年7月29日

驚異の深海生物展

先週の21日、NHK公開セミナーを聞きにいく前に、千葉県立中央博物館へ企画展「驚異の深海生物展・未知の深世界をさぐる」を見てきた。
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博物館なので生きた深海生物を見ることはできないが、興味深い液浸標本(ホルマリン浸け)や剥製が並ぶ。
僕は深海生物にあまり詳しくないので、見た目の面白さを楽しんできた。
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会場中央にどーんとダイオウイカの原寸大模型。こうやって展示されるとその大きさに圧倒される。
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かにづくし。ちなみに僕は蟹座。食べる方は、それほど好きではない。
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左がグソクムシで右がフウセンウナギ。グソクムシのグソクとは具足、そう武士の甲冑のことである。これを見ると背中がぞぞぞとする人も多いかもしれないが、なかなかかっこ良いのである。フウセンウナギはとてもファニー。展示場所は離れているのだけど、お気に入りで並べてみた。
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次はアンコウづくし。これがまたファニー。雄は、雌の身体にくっついて寄生して生きる精子だけを供給する存在。
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これはもう名前を覚えていないのだけど、とにかくデザインが秀逸。というかよくぞここまでというか、実在する生物の凄みがここにある。
地味な展示だけど、生物のデザインの面白さがよくわかる展覧会である。おすすめです。恐竜博のついでにでも。
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投稿者 corvo : 21:23

2006年7月27日

ヌードクロッキー4

今日は、前回からあまり間を空けずにヌードクロッキーに行ってきた。毎回、楽しみにしているのだが、今回はちょっと問題の多い場であった。
通常、ヌードモデルに対しては、最大限の敬意と礼儀を持って接しなくてはいけない。ポーズに入る前の「よろしくお願いします」、終わった後の「お疲れさまでした。ありがとうございました」。これらの挨拶はごく当たり前である。
ヌードモデルは、全く見知らぬ人たちの前で、一糸まとわぬ姿となりポーズをとってくれる。アトリエ内の温度管理、部外者から見えないようにする工夫等、常に気配りをしなくてはいけない。これらは、主催者だけでなく、参加する全員が共有していなくてはいけない、と僕は思っていた。
しかし、どうやら今日の会は違っていたのだ。僕にとっては信じられないことの連続であった。
ポーズ開始が午後6時30分から。もちろん早めにいって場所取りをし、画材も準備万端すぐにでも描けるようにセッティングして、友人と雑談しながらモデルさんを待っていた。時間通り最初のポーズが始まる。20分を一こまとするのだが、その中で5分4ポーズとか10分2ポーズといったふうに、ポーズを変えていってもらう。その間に休憩は一切入らない。それなのに、遅刻者が続々と入ってくるではないか!主催者も疑問も持たずに、アトリエ内に入れてイーゼルなどのセッティングを手伝っている。がたがたと五月蝿く集中できない。出入り口には目隠しのカーテンがあるので、廊下からモデルさんの姿が見えることはないが、ポーズ中に入ってきて準備をするなどもってのほかである。ましてや描いている僕の目の前を通り過ぎるなど、言語道断である!!!!!!!!!!!!
この会はヌードクロッキーを描きたい人の趣味の集まりであるが、どんな場であっても最低限の礼儀がある。集まっているメンバーには美大出身者や、プロのイラストレーターも少なからずいる。真剣に描きたいという気持ちから、集まってきているのだと思っていた。2時間30分で2000円のを支払って参加しているのだが、この金額は僕にとっても非常にありがたい。プロのヌードモデルを雇うには、それ相応のギャランティーが必要であるから、個人でこういった場を作るのはとても難しい。そんな面からも、こういった場を提供してくれている主催者には感謝していた。でも、最低限守るべきルールが守られないのでは、気持ちよく参加することはできない。

最初の20分の間に入ってきたのは、4〜5人だったと思うのだけど、あまりに気になったので休憩時間に「モデルさんのポーズ中に入ってくるとは、失礼すぎないか?」と問いかけたのだけど、「すみませんでした」という答えがあったのは一人だけだった。20分の後にかならず休憩が入る。ポーズが終わるまで、廊下で待てば良いだけの話である。なぜ、それができないのか?そして、どうして主催者は、参加メンバーたちは、この礼儀知らずたちを許してしまうのか?理解に苦しむ。
かなり集中してクロッキーしていたのだけど、最後までもやもやした気持ちが少し残ってしまった。
平日だったということで、仕事帰りの方も多く時間に間に合わなかったらしいのだけど、それなら休憩時間まで待てばよい。
そして終盤、それ以上に頭にくる出来事が起こった。休憩時間はトイレに行ったり、廊下に出て身体を伸ばしたり、様々な過ごし方があるのだけど、ポーズ開始前には自分の場所に戻り備えるのが普通である。それなのに、ポーズが始まってから入ってくる若い女性がいたのである。1回だけならうっかりということもあるが、2回続けて同じことをしたのだ。悪びれる風もなく堂々と入ってきて、当然終わった後は皆に謝ることもしなかった。この時ばかりは、僕ももう何も言わなかった。

帰り際、主催者と少し話をしたのだけど、僕の対応は場の空気を乱すのでやめてほしいという趣旨のことを言われた。どういうことだ!?ポーズ中に入ってくる人間は場の空気を乱していないのか?誰にも迷惑かけていないのか?そんな人たちよりも、僕の方が迷惑だというのである。
「遅刻しない」。「ポーズ中に出入りしない」。たったこれだけのことを守れば良いだけなのに、それが出来ない人間が擁護される場など、こちらから願い下げである。残念ではあるが、この会には二度と参加しないだろう。
たくさんの人に集まってもらわないと、モデルさんへのギャラや会場代などがペイできないことは理解できる。だからといって礼儀もない人たちが許されるというのは次元が違う。今日は友人を誘って参加したのだけど、彼女ももう来たくないと言っていた。確実に二人のお客さんを失ったのである。

いい加減な気持ちでは絵を描くことはできない。こんなことを続けていると、いつまでたっても絵描きはいい加減だと思われてしまう。僕はそれが耐えられないのだ。
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今日のお気に入りの一枚。10分ポーズ。鉛筆は2B。
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投稿者 corvo : 23:38

2006年7月26日

日本科学未来館でワークショップ

今日、予告通り日本科学未来館でワークショップを行った。ここのところのぐずついた肌寒い日から一変して、よく晴れて暑い。おまけにけっこう蒸し蒸しする。コンクリートと金属の建造物で囲まれたお台場に行ったので、余計にそう感じたのかもしれない。
日本科学未来館に11時を少しすぎたところで到着。猛暑の中、駐車場への案内のために、担当者が館の外で待っていてくれた。5分ほど待たせてしまって、申し訳なかったです。
到着してすぐに、用意してきた荷物を降ろし、代車に載せて運んでもらう。その後、パソコンをつないでのスライドショーのために機材のチェック。やはりというか、いつも通りというか、ディスプレイにつなぐアナログのアダプターを忘れてしまった。幸い、ディスプレイのほうにデジタルの入力端子があり、デジタルケーブルを用意してもらってことなきを得た。

講演会場はもえる森 とける大地「マンモスからの警告」展の展示会場の一角。展示空間にあるため、ディスプレイと手元が暗く非常にやりにくい。また、展示で使っている音楽が聞こえてきて、とても気が散る。僕はできるだけお客さんの顔を見ながら話をするので、暗くて見づらいと反応が分からなくて話をしにくいのである。しかし、音楽にはまいった。何度か言葉を忘れそうになった。やはり閉じた静かな空間で、対話しながら進めていきたい。
今日も原画と骨コレクションの一部を持っていったのだけど、皆さん興味津々である。
マンモスの復元についてとはいえ、どうしても恐竜の話が中心になる。スライドショーの内容も、マンモスや象などの大型ほ乳類に少し触れるようにしたのだけど、2/3は中生代より古い古生物の話。ほ乳類についてはもっと勉強しないと、人前で話すにはまだまだである。

なんとか講演が終わった後に、ワークショップを開くための会場へ移動。大きめの教室のような部屋で、できればこちらの部屋で講演も開きたかった。
今回、このblogで紹介してきたマンモスの骨格復元図と筋肉復元図をコピーした物を全員に配布し、これをもとに復元の作業を体験してもらったのだけど、まず最初は展示中のユカギルマンモスのスケッチから始めた。こんなチャンスはめったにあるものではない。愛地球博ではベルトコンベアーに乗ってしか観賞できなかったユカギルマンモスを(地球博へは実際に見に行っていません)、約50分スケッチすることができたのである。未来館のスタッフに感謝である。ワークショップ参加者に混じって、僕もひたすらスケッチに勤しんだ。ガラス越しに見える冷凍庫に入った18000年前のマンモスの頭部。鼻はすでに欠損しているが、まぶたや外耳は生きていたときと全く同じであろう形をとどめている。
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これが僕がスケッチしたもの。B3のケント紙に鉛筆(B)。会場が証明をぎりぎりまで落としているため、手元が暗くて描きにくかったが、実物を目の前にすると集中力が増してくる。ちょっと画面の上のほうに寄りすぎて、構図をミスしてしまったのが悔しい。牙の入り方が窮屈になってしまった。
参加してくれた子供たちや保護者の方も、真剣に描いている。無理な体勢を強いられる、窮屈な場所だったにも関わらず、私語もなく黙々と描いていた姿に感銘を受ける。本物の化石の持つ引力だろうか。

15時30分までスケッチをした後、ワークショップ会場へ戻って、いよいよ復元作業を始める。
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まず、骨格図の上にトレーシングペーパーをのせて、骨格の輪郭をトレースする。それが全て終わった後、トレーシングペーパーを裏返し、鉛筆をこすりつけて即席のカーボン紙を作る。トレーシングペーパーを最初の状態に戻して、新しいケント紙の上にのせ、トレースした骨格の輪郭をあらためてなぞっていく。これで、ケント紙の上に骨格図を転写することができる。
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親子で真剣にトレースしているところ。神経を使う作業なので、短時間とはいえけっこう疲れる。

実は言葉で説明していても、非常に面倒くさい作業である。僕はこの行程が大嫌い。できれば避けて通りたいが、そうもいかない大切な部分である。
こういった地味な単純作業をやってもらうと、それぞれに個性が出る。描き始める場所も違う。牙からだったり、頭からだったり、背骨からだったり。要領よく線を選べる子、ものすごく慎重で時間がかかってしまう子、思いもよらない輪郭をトレースしている子。千差万別で面白い。でも、もとになっている骨格図は同じである。
ただマンモスの生きた姿を描くだけなら、展示会場にあった実部大の復元模型をスケッチしたり、すでにある復元画を参考にすれば簡単かもしれない。しかし、それでは復元という作業からは離れてしまう。あくまでも化石として残された骨から出発することが大前提である。ケナガマンモスなので、最後には毛むくじゃらになってしまう。でも、骨格図から始めていることで、それぞれの関節の位置や各部の長さを意識することができる。これがとても重要なことだ。内部の構造を知っているか知らないかでは、出来上がりに大きな差が出る。内部構造が反映されていないNHKのCGは、前提から間違っているのである。
全体にワークショップの時間が短かったので、駆け足の作業となってしまったが、それぞれに楽しんでもらえたようだった。同じ骨格を使ったのに、実に個性的な仕上がりだった。

よく「自由に絵を描きなさい」という課題があるが、これは音楽で言えば「自由に作曲して、楽器で演奏しなさい」ということと同義だろう。放っておいても絵を描いているような子供は嬉々として描いてしまうかもしれないが、そうでもない大多数の子供たちは途方にくれてしまう。しかし、今回のように明確な目的をもった課題のとき、とにかく一生懸命に画面に向かおうとする。トレースという作業は窮屈だし、向き不向きもあるのだろうけど、一人としてさぼる子供はいなかった(もちろん大人も)。一人一人が自分の作業に没頭するから、おのずと個性的な結果になる。逆に、自分が何を描いていいか分からずに、上手いと思った子供の絵を真似したりしたら、それこそ同じような画面が再生産されて没個性になってしまうだろう。「自由に絵を描きなさい」とうことは、それだけのリスクを抱えているのである。
復元画のワークショップは、いつも勉強になる。この機会を与えてくださった未来館に感謝です。
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投稿者 corvo : 22:32

2006年7月25日

Mammuthus skeleton 03

昨日、修正(描き直し)した骨格図をもとに、筋肉を復元したものを作成した。
現生のインドゾウの解剖図を参考にしている。
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骨の形態の違いや、プロポーションの違いから、まったく同じというわけにはいかないが、恐竜などに比べるとはるかに現実的な復元が可能である。しかし、象という動物を知らないで、マンモスの骨格だけ見たときに同じような復元ができるかというと、ほとんど不可能かもしれない。
象は大型のほ乳類で、口が地上から高いところにある。キリンや馬のように首が長ければ、水を飲むことが出来るが(キリンはかなりつらそうな姿勢ではあるが)、象のような首の長さでは直接口をつけることができない。そのために筋肉の固まりである上唇を伸ばすことで、ようやく水を飲むことを可能にしている。マンモスのようにミイラ化石が見つかれば、この鼻の存在を知ることができるだろうが、骨の化石だけでは皆目検討がつかないだろう。
これからKeynoteを使ってスライドショーを制作します。
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投稿者 corvo : 17:05

2006年7月24日

Mammuthus skeleton 02

昨日、描いた骨格図をもとに、筋肉の復元図を描いていたところ、どうにも納得できない部分が出てきた。今日のうちには、骨格図、筋肉復元図まで完成させる予定だったのだけど、やはりしっくりこないので骨格図から描き直すことにした。
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デジタルで描いていないので、描き直す場合は白紙のイラストボードからとなってしまう。一度、制作しているので骨格に対する理解は進んでいるが、時間がかかることに変わりはない。日記のアップの日付は24日だけど、実際このエントリーを書いているのは25日の午前3時30分である。
そして、骨格図が完成。
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どこが違っているかというと、肩甲骨の位置である。前回のものは肩甲骨の付く位置が低すぎて、胴体が全体に前上がりになりすぎていた。また、神経棘突起も高く飛び出し過ぎである。そこで胴体の角度を変えて、肩甲骨が胴体に対して高い位置に来るように修正した。これでようやくしっくりきたかな。
明日、起きてから、すぐに筋肉の復元図を制作し、講演のためのスライドショーも準備しなくてはいけない。科博ニュースのイラストも描かなくては。
まだまだ忙しい日が続きます。
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投稿者 corvo : 23:55

2006年7月23日

Mammuthus skeleton 01

今年のはじめ頃、マンモスの復元を試みたことがあったのだけど、それが縁で今週ワークショップを行うことになった。
現在日本科学未来館で開催されているもえる森 とける大地「マンモスからの警告」展に関係したイベントで、子供向けのセミナーを行うことになっている。
内容は二本立てで、復元画についての講演と、ユカギルマンモスを見ながらスケッチをしようというのもだ。
『復元画の描き方—生物が生きていた証拠・化石からー』
『ユカギル・マンモスの復元画を描こう!』
そこで、このワークショップのために、マンモスの骨格図を描いてみた。たくさんの標本が知られていて、古生物の時間でいえばつい最近まで生きていた動物なのだけど、骨格図を描こうとすると意外に資料がすくないのである。
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多くの資料をつなぎ合わせながら、組み立てていくような作業である。ある程度、推測に頼る部分も多く、自信をもってこれがマンモスの骨格だというものを描くのは難しい。
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BBケントのイラストボード(B4サイズ)に鉛筆で下描きをして、ロットリングでペン入れをしていく。
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完成したものが、これ。これをもとに筋肉を復元した図を用意する予定である。目の前のユカギルマンモスを見てスケッチし、その後この骨格図を使って全身の復元画を描こうと思っている。
普段は恐竜の復元について話をしているのだけど、ほ乳類となると骨格の特徴がまったく違い、頭部の筋肉の付き方に大きな違いがある。ほ乳類にはは虫類と違い表情筋があるため、頭骨を見ただけではその生きた姿を想像することが難しい。象の仲間であるマンモスには長い鼻があり、これは全て筋肉で構成されているため、頭骨を見ただけではその存在を想像することはほとんど無理だろう。インド象やアフリカ象といった、現在生きている仲間いるからこそ復元できる動物の一つなのである。

かねてから懸案だったパソコンのモニターを購入。大きなものではなくて、今ある物を活かしてデュアルモニターにすることにした。
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ヤフオクで中古を購入。非常に程度のよいモニターが手に入った。

先日の反面教師の教訓を生かして、ワークショップに臨みたいと思います。
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いつも、応援ありがとうございます。

投稿者 corvo : 21:55

2006年7月22日

NHK公開セミナー「NHKスペシャル・恐竜VSほ乳類」2

しつこいようだが、前回のエントリーに補足を。
今回の恐竜博は幕張メッセで行われるということもあって、NHK千葉放送局が積極的にイベントを行っている。僕も縁あって小学校恐竜キャラバンに講師として参加するなど、広報活動に協力してきた。とても楽しい経験ができたし、スタッフの方たちとも仲良くなることができた。
そんな彼らが力を入れていたイベントだからこそ、盛り上がるものになってほしいと願っていたのである。
それなのに、昨日のプロデューサーの一言で開いた口が塞がらなかった言動があった。
まだ、幕張メッセの恐竜博を訪れていないのだという。そして、今後もスケジュールがあうかどうか分からないという話をしていた。信じられないことである。
先週のシンポジウムには、番組に登場している海外の研究者も多数パネリストとして参加していた。当然、レセプションにも出席されていた。普通なら、どんなに忙しくても時間をとって会場へ足を運び、彼らに挨拶するのが筋ではないだろうか。もちろん、すでに別席で歓迎し挨拶は済んでいるのかもしれないが、最低限、彼らが研究対象として何よりも大切に思っている化石たちを見に来るべきではないだろうか。実際に恐竜博の会場を見ていたら、もっと客席の子供たちともコミュニケーションをとることができただろう。

先日のエントリーに「cgartist」と名乗る方から書き込みがあった。
僕や他のコメンターから出た「プロの仕事」ではないという言葉にたいしての反論である。一つ整理しておかなくてはいけないのは、僕はCGを作っている現場のスタッフを批判しているわけではないということである。あくまでも番組としておかしな所があると言っているのである。
繰り返しになるが、僕自身はCGの知識も技術もない。しかし、古生物を「復元」するということはどういうことか?ということに関しては、明確に話をすることができる。その判断基準から照らし合わせて、今回の番組のCG映像を見る限り「復元」するという最低限の手順を踏んでいないことがはっきりと分かる。また、僕は絵描きである。ものを作ることに携わっており、日々予算や期日に苦しみながらも、質の高い仕事を目指している。CGの現場は分からないし、実際に仕事をしたことがないので想像の域を出ないが、では僕が絵描きとしてどういった現場で仕事をし、どれだけの枚数や手順を重ねて制作しているのか、cgartistさんは理解されているのだろうか。
でも、仮に僕の仕事の現場を知らない人から批判を受けたとしても、その作品を公開している以上甘んじて受け入れなくてはいけないし、出来の悪さの言い訳をしてはいけない。
もう一点、誤解を解いておきたいのだけど、ここにコメントをしてくれたり読者になってくれている人たちは、皆が皆古生物オタクだというわけではない。むしろ少数派だろう。知人友人も多いのだが、クリエイティブの現場で日々頑張っている人たちも少なからずいる。古生物(科学)に関して言えば、オタクでなくては気づかないこと、知り得ないことというのは存在しない。論文として発表されている科学的情報に、全ての人がアクセスすることができる。常に開かれているのだ。その情報に対して真摯に向き合えば、復元の初歩的なミスは防げたはずである。
どんなに技術レベルが高くても、正確な科学的情報がなければ、きちんとした「復元」は不可能だということを良く分かっておいてほしい。クリエイターであるならば、「復元」が間違っていると指摘をした「古生物オタク」たちへ批判の矛先を向けるのではなく、きちんとした情報を共有できない組織のあり方を再考するべきではないだろうか。
反論ありましたら、いつでも自由に書き込んでください。
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投稿者 corvo : 13:45

NHK公開セミナー「NHKスペシャル・恐竜VSほ乳類」

21日金曜日、朝から幕張の恐竜博へ出かける。これまでレセプション、シンポジウムとイベントがあったため、じっくりと展示を見ることが出来ていなかった。なので幕張に行くのはこれが3回目。その後、千葉県立中央博物館へ企画展「驚異の深海生物」を見にいったのだけど、これらの模様は後日、別のエントリーで書こうと思う。

そこで、今回のタイトル”NHK公開セミナー「NHKスペシャル・恐竜VSほ乳類」”について。千葉県立中央博物館を出た後、友人たちと車で千葉市内の会場へ向かう。近くの食堂で別の友人と合流し、早めの夕食をすませてセミナーに臨んだ。最初にはっきり言っておくが、「たいへんつまらない」セミナーであった。
今回は対談という形をとっており、北海道大学総合博物館助手の小林快次氏とNHKチーフプロデューサーの高間大介氏である。このプロデューサーの高間氏は、以前古生物学会で講演し、僕から突っ込まれた際まともに質問に答えず目が泳いでいた御仁。
開場午後6時、開演午後6時30分、終演午後8時30分という遅い時間でのセミナーで、子供たちにはつらい時間帯である。通常であれば、家で夕食を食べ、お風呂に入り、寝る支度をする。そんな時間に頑張って、多くの子供たちが参加していた。
開演後、のっけから驚く。対談が始まったのではなく、いきなり地上デジタル放送の解説である。「NHKスペシャル・恐竜VSほ乳類」の映像を使っているのだけど、内容は地デジの広報以外の何物でもなかった。これが延々15分も続く。配布されたパンフレットにも、そんなことは何も書いていない。
地デジの説明の後、ようやく対談がスタート。どこまで打ち合わせてあるのか、どういった進行になるのかが見えてこない。司会も進行役をするわけでなく、対談というより高間プロデューサーのおしゃべりとスライドショーが続く展開。このかた、自分は裏方と言いながら、実は出たがりの喋りたがりだろう(と僕は勝手に思っている)。前回の番組の時のCGよりも格段に質が上がっているということを強調している。監修の小林氏(ふだんは小林君とよんでいるのだけど)の協力で、非常に質の高い物になったことを、前回のアロサウルスと比較しながらの解説。まあ、比べる対象があまりにあんまりなので、確かに良くなっているのだろうが、依然、骨格的特徴からは大きく外れており、まともな復元とは呼べない。眼穿の前にある涙骨突起はなく、眼穿の上に大きな張り出しがついている、まるでティラノサウルスのよう。前肢の3本の指は同じ長さで、関節も同じ数か。恐竜の場合、第一指から2、3、4と指骨の数が増えなくてはいけない。中手骨の長さも太さもそれぞれ違う。それらの情報は、まったく反映されていない。
他にも指摘を受けた例として、スーパーサウルスの口の動かし方を上げていたのだけど、最初、ほ乳類のように下あごを左右に動かして咀嚼させていたのである。これはジュラシックパークに登場したブラキオサウルスの間違った復元として、とても有名な事例である。そんなことをスタッフも、このプロデューサーも知らなかったのだろうか。奥歯のない顎でどうやって咀嚼するというのか。
まあ、こんな感じでとりとめもない話が続くのだけど、このプロデューサー自慢話が結構好きである。今回の番組が世界中の研究者から注目されていて、ビデオを送ってくれという注文が寄せられているらしい。それって、反面教師とするため?これだけ突っ込みどころ満載なら、「べからず集」としては優秀なコンテンツであろう。
今回の対談のつまらなさに、小林氏の責任はなかったと思う。彼は出来るだけ誠実に、言葉を選んで答えようとしていた。
このセミナーの特筆すべき点は、2時間という長丁場に関わらず、一度も休憩がなかったことである。子供たちもたくさん来ているのに!僕は我慢できず、トイレに行くために中座してしまった。司会者なり、プロデューサーなりが、気を使って休憩をいれるべきである。「皆さん、休憩とらなくて大丈夫ですか?」そんな一言もまったくなかった。
質疑応答の時間がかなりあったのだけど、ここでも驚くべきことが起こった。最初の質問に対して、高間Pは延々15分も喋り続けたのである。詳しくは書かないが単純な質問である。「はい」か「いいえ」で答えられるようなものである。それを自分の考えにもなっていない考えを、貴重な時間をつかって披露したのである。何を言ったか記憶にも残っていない。今回、僕は質問をしなかった。手も挙げなかった。たくさん来ている子供たちに質問のチャンスが廻ることが大事だと思ったからだ。壇上で答える人間は、的確に答え、できるだけたくさんの質問者にチャンスを与えるべきである。彼はそれをしなかった。また、司会者もコントロールしなかった。最悪である。
この場に同席した友人たちも、同じような感想であった。不適材不適所。きちんと科学を理解し、自然に敬意を払い、ユーモアがある。そんな人に番組を作ってほしい。切に願うばかりである。

このセミナー、僕の記憶が確かならまったく笑いがなかった。なんてこった。
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ブログ村、2位キープ。ありがとうございます。これからも応援よろしくお願いします。

投稿者 corvo : 01:06

2006年7月21日

NHKスペシャル「恐竜VSほ乳類」

昨日、ようやく録画してあったものを見たところである。といっても前編の「巨大恐竜繁栄のかげで」を見るのがやっとで、後編はオンエア中に2/3ぐらいを見たままで終わっている。
「恐竜VSほ乳類」というタイトル、コンセプトには、違和感を感じる。繁栄しているものが、自然界の覇者であるという考え方は、決定的に間違っている。自然界に勝者も敗者もない。生態系にとって、全ての生物は必然で重要な役割をもっているはずである(人間ははずれているかもしれないが)。生物にとって一番大切な前提を抜きにして、自分勝手な物語を作ってしまうのが嫌なのである。
CGは予想通り、クオリティの高いものではなかった。CGの技術的云々についてはコメントできるほどの知識と経験もないが、生物らしさを感じることができない。すでに製作されてから7年になる「Walking with Dinosaurs」には、自然と生物に対する敬意があふれていた。NHKのものには、そこが感じられない。何が何でも、自分たちのシナリオに誘導しようとしていて、「自然」「生命」といったものを、都合良く解釈しているように見えてしまう。
実写のロケーションとCGを組み合わせているのだけど、ジュラ紀だというのに地表を草が覆っているのはどういうことだろう。だれも指摘しなかったのだろうか。出来上がった映像を見て監修者が指摘しないはずはないと思うのだけど、間に合わなかったのだろう。
CGを製作するスタッフに生物の知識が不足しており、研究者との連携がうまくとれていないのではないだろうか。作ってからチェックしてくださいでは、修正できる範囲は極めて小さい。コンセプトを作る段階から、がっちりタッグを組んで綿密に作っていくべきである。そんな当たり前のことをしていないから、お粗末な結果になってしまうのである。
ぴょこぴょこ跳ねるトリケラトプスに唖然。
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投稿者 corvo : 08:23

2006年7月19日

雷竜、ふたたび。

止まっていた雷竜の企画を再始動。プロットを最初から組み立て直す。
いままで考えていた物は、前回の「ティラノサウルス」を踏襲したもので、ある意味不自由な作りになっていた。また、復元の科学的な部分にこだわるあまり、恐竜の持つダイナミックな動きやドラマが抑制されてしまっていた。今回は、より想像力を働かせてみたいと思う。でも、最初のプロットはまだ少しかたいかもしれない。
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誕生から、一頭のアパトサウルスに注目して、その成長を見守っていく感じのものを考えている。
明日はこの企画の最初の打ち合わせ。都内の某出版社へ、午後出かけていく予定である。まずはプロットと、いくつかのラフスケッチをもとにたたき台を作っていく。作家だけでは煮詰まってしまうので、編集者とのやりとりは非常に重要である。

新しい漫画を読み始めた。といっても既に連載は終わり、大ヒットしている漫画である。「DEATH NOTE」。すでに読んでいる人は今更でしょうが、昨日から読み始めた。
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5冊ずつのプチ大人買い。読んだのは6巻まで。7巻までが第一部らしいのだけど、寝る前のお楽しみである。この漫画、ネームが異常に長い。大体単行本だと15分ぐらいでさっと読んでしまうのだけど、これは30分以上かかる。
それでもディテールが追いきれないので、大雑把な読み方になってしまっているのだけどね。
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投稿者 corvo : 23:59

2006年7月18日

ぎっくり腰

今朝、掃除機をかけていたのだけど、すこし本体を持ち上げて身体をひねったところ、腰の左側に激痛が。立っている時は良いのだけど、腰を曲げたり座ったりするとつらい。しょうがないので、急遽行きつけの接骨院へ行くことに。背骨にそって打診をしてもらうが骨から響く痛みはない。周辺の皮膚を触ってもらったところ熱感があることから、腰の筋肉を痛めたようだ。今回はいつも治療コースは中止して、腰のアイシングから始める。
刺激を与えることができないので、マッサージもなし。手の治療は超音波、お灸といつも通り。でも、座ってではなく、うつぶせで寝ながらの治療。
普段、長時間座って作業をしていることが、一番の原因だということである。今、この書き込みも立ちながら、キーボードを叩いている。夕方から友人の個展のオープニングパーティーなのだけど、今日はアルコール禁止令が出てしまった。
これから自宅で打ち合わせがあるのだけど、これも立ったままでないとつらそう。
今日は寝るまで、出来るだけ座る時間を短くします。
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投稿者 corvo : 14:28

2006年7月17日

世界の巨大恐竜博2006・記念シンポジウム

ちょっと更新が開いてしまった。昨日は午前中から幕張の恐竜博会場へ。朝から暑い。いつもなら電車の中で冷房用に一枚羽織るのだけど、それもいらないほどに暑い。なので長袖のシャツを手で持っての移動。
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この日も、展示をゆっくり見る時間はなかったのだけど、前回気がつかなかった翼竜を発見(そんなたいしたことではないけど)。展望台のようになっている場所から見えるのだけど、少し遠い。これを下のフロアから見ようとすると、さらに遠くなってしまう。翼竜は繊細な骨の構造をしているので、もっと近くで観察したいところである。空を飛ぶ動物だからといって、高い位置に展示することはないと思うのだけど。
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ティラノサウルスとトリケラトプスの背景に見える垂れ幕が、じつにゆるい感じである。中生代の植生や環境を表現しているのだろうが、垂れ幕のしわの入り方と同様に、どうにも緊張感のないイメージである。ここまで拡大するのなら、かなりの密度の描写が必要だろう。それが出来ないのなら、もっと抽象的なイメージでも良かったかもしれない。自然科学展の展示レベルも美術展並にしていくべきだろう。僕が関わったことがある恐竜展も含めて、脇が甘い感じが毎回否めない。美意識の高い展示を見たいと思うし、そんな展示に参加したいと思う。
先日のエントリーで少し話題にした、竜脚類の肩甲烏口骨だが、カマラサウルス以外でもエウロパサウルスで左右を関節させた復元が行われていた。
blog06071702.jpg
離島で小型化したと考えられている、全長6mのブラキオサウルス科の恐竜である。画像に図示した部分に、獣脚類に見られるような叉骨があっても不思議ではないと思うのだけど、今のところ竜脚類では発見されていない。

この日は記念シンポジウムが、恐竜博会場近くの幕張メッセ国際会議室で開催された。実は抽選に漏れたのだけど、友人から受講券を譲ってもらうことができて入場することができた。しかし、会場を見渡すと空席がけっこう目立つ。当選したのに、こなかった人が多いのだろうか。外れて残念がっていた友人もいただけに、複雑な心境になる。
会場に入ったとところで、羽織るための長袖のシャツが無くなっていることに気づく。恐竜博の会場で落としたと思い、拾得物を調べてもらったのだけど届いていないという。もし見つかったら、後日連絡してもらうようお願いをして、シンポジウム会場へ戻った。
パネリストと題目は以下の通り。
-----
「恐竜研究ってこんなにおもしろい」 群馬県立自然史博物館長 長谷川善和氏
前半、「恐竜の起源と巨大化」
「三畳紀の恐竜の起源と地球環境」 ニューメキシコ自然科学博物館長 エイドリアン・ハント氏
「大型恐竜の大陸・中国における竜脚類の進化」 中国科学院古脊椎動物古人類研究所教授 董枝明氏
「スーパーサウルスと巨大化の時代〜モリソン層の恐竜たちと地球環境」 デンバー自然科学博物館博士 ケネス・カーペンター氏
「大きくなった恐竜と大きくならなかった恐竜たち〜ジュラ紀のヨーロッパ」 ロウリンハ博物館研究員 オクタビオ・マテウス氏
後半、「多様に進化していった恐竜たち」
「中国・熱河と日本の恐竜たち」 国立科学博物館地学研究部主任研究員 真鍋真氏
「大きな爪と羽毛を持った恐竜〜様々な形への進化」 中国科学院古脊椎動物古人類研究所教授 徐星氏
「恐竜は何を食べたか」 北海道大学総合博物館助手 小林快次氏
「肉食恐竜の生態最新研究成果」 ブラックヒルズ地質学研究所所長 ピーター・ラーソン氏
-----
各パネリストの発表は、恐竜パンテオン特集・世界最大の恐竜博2006に詳しく掲載されている。
非常に面白かったのが、ピーター・ラーソン氏の発表で、ゴルゴサウルスの標本から分かる、怪我や病気についての話。僕も前回のエントリ−でこの標本の骨折や骨の腫瘍について触れたのだけど、さらに詳しく説明を聞くことができた。左肩甲烏口骨の腫瘍と思われたものは、骨折が治る過程で感染症に罹り、骨が異常増殖したものだということである。尾椎にも骨折の治った痕があるのだけど、これはティラノサウルスの有名な標本である「スー」にも共通しており、交尾の過程で起こる典型的な怪我だったのではなかったのだろうかということである。
また、保存の良い脳函を調べたところ、脳腫瘍を患っていたのではないかと思える証拠が見つかったというのである。脳は軟らかい臓器で化石には残らないが、腫瘍化したものが骨化し化石として残っていると考えられるということだった。

シンポジウム終了後、上京していた友人や恐竜倶楽部のメンバーと近くの飲み屋へ移動。この時点でも、僕のシャツは見つからず。半ば諦めかけていたとき、飲み会を中座して帰った友人が再び戻ってきた。何事かと思ったら、僕のシャツを片手に持っている。どうやら駅から会場へ向かう途中に落ちていたらしい。感謝、感謝、助かりました。およそ数時間そのままになっていたとは、平和というか無関心というか、雨が降らなかったのがラッキーだった。
いろいろあったが、この日も充実した一日でした。
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投稿者 corvo : 20:34

2006年7月15日

世界の巨大恐竜博2006

昨日は午前中まで非常勤講師の仕事をし、午後から幕張メッセで開催されている世界の巨大恐竜博2006の開会式とレセプションに行ってきた。幕張の恐竜博で招待状が来たのはこれが初めて。
午後3時から開会式、40分後に内覧会が始まる。すぐには会場に入らず、ある雑誌の編集者と喫茶店で雑談。
5時からレセプション(オープニングパーティー)ということもあり、駆け足で見る。最初に生命の進化を大きくとらえた展示で、それぞれの時代を代表する生物の標本が並ぶ。今回の展示会場は、通路が狭くなくて歩きやすい。長い階段状のスロープを上ると展望台があり、眼下(それほど高さはないが)に巨大な恐竜たちを見ることが出来る。
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これが目玉のスーパーサウルス。レンズの都合で一枚では入りきらなかった。2002年のセイズモサウルスに比べると、復元骨格の質感が少し甘いか。発見されている部位が少なく、復元に頼っている部分が大きいので仕方ないだろう。
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これはカマラサウルスの親子の標本。画期的なのは、左右の肩甲烏口骨がぴったり合わさっていることである。これは、なかなか見ることができない復元で、極めて自然であると思う。恐竜は四足歩行のほ乳類のように、左右の肩帯を独立して動かしたのではなく、左右の肩帯は関節して固定されていたと考えている。二足歩行の獣脚類の肩帯が叉骨でつながっていることからも、竜脚類も同様のことが言えるのではないだろうか。
首の上がり方は少し極端かもしれない。残念なのは、幼体の組み立てでは左右の肩帯が離れてしまっていることである。他にも竜脚類の組み立て骨格が何体もあるのだけど、すべて左右の肩帯が離れてしまっている。
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これは見たかった標本の一つ、ゴルゴサウルスの全身組み立て骨格。どうやら満身創痍のままに化石になってしまったようだ。右足の腓骨は何カ所も骨折して短くなっており、左の肩甲烏口骨には癌化したようなふくらみが目立つ。やはり腹肋骨のついたでっぷりとした胴体が、自然な動物の体型に思える。近くに展示してあったティラノサウルスにも腹肋骨が復元されていて、見応えがある。この標本10mと最大級ではないのだけど、これまで見たことのない標本。それもそのはず、2001年に発見された愛称「バッキー」と呼ばれる標本で、今のところ最も新しく発見された個体だということである。
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これが疑問の残る標本。キャプションでも、図録でも「シノベナトル」と明記されているのだが、標本の特徴を見る限り小型の植物食恐竜に見える。シノベナトルであれば獣脚類トロオドン科であり、小型の肉食恐竜ということになる。
まず、歯が肉食恐竜のものには見えない。眼穿にはヒプシロフォドンやヘテロドントサウルスに見られるような突起(骨の名称が分かりません)が見える。骨盤も見る限り、鳥脚類にしか見えない。恥骨が後ろへ回転するのは獣脚類にも見られる特徴なのだが、その場合は先端に大きなふくらみが出来る。この写真で見る限り、ほとんどまっすぐの棒状にようにしか見えない。謎な標本である。
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これは会場外に設営された「スーパーエコサウルス」。NHK恐竜キャラバンで小学校を廻ったときに書いてもらったメッセージのカードを、タイルのように貼ったものである。環境への意識を高めてもらうためのイベントで、小学生たちの素直なメッセージが丁寧に書かれている。
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5時過ぎにホテルのレセプション会場に移動して、立食パーティーに参加。写真は帰りにもらった記念品と図録。モリーのぬいぐるみもあったのだけど、写真に撮り忘れた。スーパーサウルスのミニチュア骨格モデルは、透明レジンに着色してあり肋骨のふくらみや細さなどが、的確に再現されている。こういう方法もあったのかと、目から鱗である。
会場では科博の真鍋さんに通訳をお願いして、BHIのピーター・ラーソンと知り合うことが出来た。
暑く、遠い、幕張であったけど、有意義な時間を過ごせて満足の一日でした。
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投稿者 corvo : 15:30

2006年7月13日

ラジオ出演〜打ち合わせ〜壮行会

今日はまさにうだるような暑さ。湿気が肌にまとわりつくようで、ビニールハウスの中にいるような一日だった。普段それほど汗をかかないのだけど、じっとりと肌に噴き出してくる。
朝、NHK-FMに出演するため、NHK千葉放送局へ向かう。同じ千葉県内といっても、僕が住んでいる場所からはけっこう時間がかかる。千葉県は東西に走る鉄道はあるのだけど、南北につなぐ路線が少ない。接続も案内も不親切で、いつもフラストレーションがたまる。
出演は午前11時から11時30分までの間の10分間ほど。アナウサーのインタビューに答える形式である。事前に何を話すかを打ち合わせしてあったので、非常にスムーズに放送に向かうことが出来た。短い時間の中で、非常に的確な質問を準備していただけてとても話しやすい。この放送は千葉県内限定のもので、明後日から幕張で開幕する世界の巨大恐竜博2006のための、広報的な番組のひとつである(恐竜博、なんにも仕事で関わってないのだけどね)。
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スタジオの外からの様子。スタッフの方に無理を言って、撮影していただいた。右側の女性が放送部アナウンサーの上村陽子さん。うまくこちらの発言を引き出してくれる。
The Boomの「風になりたい」の曲の後に、放送がスタート。
今回は復元画についてということで、復元画の魅力、始めたきっかけ、これからの展望などを話した。復元画の魅力は、かつて生命を宿していた化石に、ふたたび命を吹き込むことが出来ることだろう。命を吹き込むなど、神ではないのでおこがましいことなのだが、かつて生きていたその姿(正解ではないかもしれないが)を最初に目にすることができる。
始めたきっかけは、以前にも書いたので割愛するが、これからの展望としては、アジア人としてアジアの古生物の復元をどんどんやっていきたいということである。今日のような暑さ、まとわりつくような熱気は、中生代のアジアそのものだったかもしれない。そんな環境に生きる我々こそが、よりリアルなアジアの復元を行うことができるのではないだろうか。
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放送が終わって、ほっとしたひととき。特に緊張することもなく、楽しい時間でした。

お昼は放送局の近くにある、大正時代から続く老舗の洋食屋でランチをごちそうになる。
駅に行くまでも、とにかく暑い。
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町中には珍しくハシボソガラスに出会う。近づいても、一定の距離を保ちながら逃げることがない。あまりの暑さに飛ぶことがおっくうなのだろうか。落ちていたアイスのコーンをくわえているところ。

千葉駅から総武線で秋葉原に向かい、Mac用品の買い物。その後、打ち合わせのため早稲田へ。日が傾いてきても、まだまだ暑い。

実は8月16日から9月6日まで、テレビの仕事でアルゼンチンまで発掘に行くことになっている。今日は、スタッフとの顔合わせと説明会を兼ねた食事会。皆で成功を願っての壮行会の意味もある。僕は当然メインというわけではなく、発掘にも参加する画家として同行することになっている。
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参加者とスタッフの集合写真。今回は俳優の西島秀俊さん(後列、右から三番目)が同行することになっていて、食事会でもご一緒させていただいた。朝の連続テレビ小説の朴訥としたイメージ(ほんの少ししか見たことありません)を感じさせながらも、とても好奇心の強い気さくな方でした。アルゼンチンで再会するのが楽しみです。

そんなこんなで、朝から夜までよく移動した一日でした。
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投稿者 corvo : 23:52

2006年7月12日

37回目の生まれた日

今日は37回目の生まれた日。まあ、それ以外にはそれほど大きな出来事のなかった日である。
随分、机の周りは片付いて、すっきりした。
明日は午前中にNHKのラジオ出演。どうも千葉だけでの放送らしいのだけど、どの番組がよくわかっていない。午前11時から11時30分までの間に、10分ほどインタビューに答えるということである。最初は電話でいうことだったのだけど、スタジオで収録ということになった。スタジオでのラジオ出演はこれが初めて。楽しんできます。
夕方に打ち合わせ。夜には食事会と、朝から出ずっぱりの一日である。
あまり内容のないエントリーで申し訳ないのだけど、この辺りで。早寝します。
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投稿者 corvo : 23:54

2006年7月11日

モンゴル大恐竜

タイトルのような「大恐竜」がモンゴルで発見されて、ウランバートルで大暴れってことがあるはずもなく、この夏札幌で開催されるモンゴル恐竜の展覧会図録が出来上がってきた。
これが非常に良い本である。これほどモンゴルの恐竜について簡潔にまとめられて、骨格の写真も豊富な出版物はないだろう。アマゾンにはアップされていないが、ISBNはあるので、近くの書店からでも注文できると思う。
「モンゴル大恐竜・ゴビ砂漠の大型恐竜と鳥類の進化」小林快次・久保田克博著、北海道大学出版会、定価905円+税(ISBN4-8329-0352-7)。
中をざっと紹介するとこんな感じ。
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僕の復元画は3点が使われている。今回のために描きおろしたタルボサウルス、愛地球博のモンゴル館の展示に使用したサウロロフス、昨年自主的に制作したサイカニアである。
こちらはカバー。
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ものすごく非現実的なスケジュールでの制作だったが、無事間に合ってほっとしている。これだけの内容を持った本を、じっくり最初から関わって作りたいものである。
本当に良い本なので、是非手にとって見てください。
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なかなか順位があがりませんね。どうしてだろう。気が向いたらポチポチっとお願いします。

投稿者 corvo : 23:52

2006年7月10日

仕事机の片付け

今日は一日かけて、パソコン周りの片付けをしようと思っていたのだけど、ワールカップの決勝戦を半分睡魔に屈しながら見ていたため一日のスタートが遅くなってしまい、またいろいろと片付けなくてはならないことも多く、結局夕方になってようやく始めることになってしまった。それでもとりあえず、モニターとキーボードの周りだけはすっきりしてみたのではある。
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写真の左側が一応片付いた状態。それによってあふれた整理されていないものが、右側の写真に多数写っている。これらも含めて、明日はきっちり片付けてしまいたい。捨てなくてはいけないもの(捨ててよいもの)も結構ある。

先日、このblogでも少し書いた料理人の話なのだけど、行きつけの料理屋の大将にも聞いてみた。彼は僕よりも少し年が上で、夫婦で小さな料理店を営んでいる。「修業時代って、殴られました?」と聞いたところ、「もちろん、当たり前のように殴られました。」という答え。そして、自分も後輩に教える時、殴ったことがあるということも話してくれた。特に日本料理の世界なので荒っぽいのかもしれないが、口で言っても分からないことは、殴ってでも教えるしかないという。また彼の経験から、怒られるときに痛い思いや恥ずかしい思いをしたことは、決して忘れないし必ず出来るようになるものだとも言っていた。
そして、殴ってでも教えるのは、本当に見込みのある人間だけだとも。特に料理は刃物を使う職場なので、逆恨みでもされたら簡単に刺されてしまうし、実際にそういった事件も過去にはあったらしい。教える側も命がけである。おのずと人を良く見て、接することになる。これはあまりに極端な例かもしれないが、教える側と教わる側に、ある一定の緊張感が存在することは大切なことである。

友人と電話で話していたのだけど、教わる側がとても甘いことが多いのではないかということである。こちらは仕事を覚えてもらいたいし教えたいと思っていても、教わる側がそれを当たり前だと思っていることが多々あり、一度言えば分かることを平気で何度でも聞いてくる。おたがい仕事をしているわけだから、いったん手を休めて対応しなくてはならず、無駄な時間を使うことになってしまう。そういったことに想像力が働かず、教えてもらうことを当たり前だと思っている輩がとても多いということだ。分からなければ何度でも聞くことは大事だと思うが、自分の覚えの悪さを恥ずかしく思い、必死になる必要はあるだろう。

僕はデッサンを最初に学び始めたとき、とても厳しく鍛えてもらった。その過程で殴られたこともないし、物が飛んできたこともないけど、画面に向かう姿勢や態度、道具の準備と片付け、指導してもらったことに対する感謝の言葉、こういった基本的なことを、繰り返し厳しく言われたものである。道具もきちんと整えられていないといけないし、カルトン(紙製の画板)に紙をセットするときも、1mmの傾きもないように気をつける。自分の目の前にある画面全てに責任を持つわけだから、相応の緊張感を持って向かっていかなくてはならない。紙もちょっと失敗したぐらいで、すぐに変えるわけにはいかない。自分が納得いくまで、その紙が限界と思われるまで真摯に描き続けなくてはいけない。いままで自分が描いていたものが全く別の物になってしまうぐらい描き直されたこともよくあった。内心、腹の立つこともあるのだけど、納得できる部分も多く、自分の至らなさを実感し、指導してもらったことに感謝することを自然なこととして受け入れていった。
絵を描くのには技術が必要である。技術の土台のない個性などいらない。僕が絵を教える限りは、きちんと基本的な技術を教えることを主眼にする。これは上手い下手の問題ではない。言語の文法を学ぶように、美術にも学ぶべき文法(技術)があると思うのである。
「自由に絵を描きなさい」。これほど投げやりで無責任な態度はない。「自由に絵を描きなさい」。プロにとっても難題であると、僕は思うのだけど。
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投稿者 corvo : 23:49

2006年7月 9日

Tarbosaurus hunting 04

風邪はほとんど治ってきたのだけど、喉の違和感が残っていて時々咳が出る。呼吸がうまくできないと、線やタッチの精度に影響がでる。リズムよく、淡々と描かなくては緊張感を保った画面を構築していくことはできない。おかげでちょっと苦戦している。
昨日のエントリーのコメントに「爪」についての話題が出たのだけど、いつも復元では悩むところである。人間の爪は骨からは離れていて皮膚にのっかっている状態であるが、鳥は末節骨にしっかりかぶさっている構造になっている。復元する上でどこから角質の爪が始まり、どれぐらいの長さまで伸びたのか。軟組織はどれぐらい爪の上にかぶさっていたのか。今のところはっきりとした答えが見つからないでいる。
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画像の図版は「The Origin and Evolution of Birds」の106ページから転載したもの。右の写真はうちにある剥製コレクションのトビの足である。鳥の種類によって、角質の部分の長さには差が大きくあるようだ。
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今日のタルボサウルスの様子。首から胴体にかけても、随分進んできた。画面全体の面積からいったら1/10ぐらいだが、一番重要なポイントから描いているので、それ以上の進捗であることは間違いないだろう。
いつも通りアルシュに描いている。この紙とても強靭でお気に入りなのだけど、膠が強く効いていてかなり臭い。しばらくするとなれるので、どうということはないのだけど、特に湿度の高いこの時期はけっこうきつい。でも、こんな部分も含めて気に入っている。
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前にも紹介したと思うけど、鉛筆はステッドラーを使用。本数はたくさん用意しておく。少しでも芯の先が丸くなったら、新しいものに変えていくためである。鉛筆の先は、常に「新鮮」な状態に保っておく。
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今、机のまわりがとんでもなく混雑してきた。明日、おもいきって机の上の模様替えをする予定。特にパソコンモニターとキーボード、タブレットの位置を快適にしなくては。パソコンで作業をするには窮屈な状態だ。ちょっと気分転換をしなくては、思考も煮詰まってきてしまっているので、良いきっかけになるだろう。
仕事が一段落した後、風邪をひいて片付けが満足にできなかったので、今週は時間を見つけて整理整頓習慣にしよう。
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投稿者 corvo : 23:53

2006年7月 8日

Tarbosaurus hunting 03

ここ2週間、風邪で具合も良くなく、どうもすっきりしない日が続いている。仕事が一息つけたところで、急に気が抜けたのか。もう少しオンオフの付け方がうまくなりたいものである。
タルボサウルスに苦戦。これまでB3のサイズで制作していたのだけど、すこし窮屈であった。最終的にはB2のサイズにアクリルで仕上げる予定なので、エスキースも同じサイズで制作することにする。そこで、パネルにアルシュを水張りする。
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久しぶりに水張りしたら、少し失敗してしまった。上のほうの左右の隅にしわがよっている。本来ここも、ぴしっと張らなければいけない。
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急がず、少しずつ描き進めていく。
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これがディテール。鉛筆はステッドラーでHBとBを使用。この二つの濃さがあれば、おおよそ十分である。線の太さ、密度もトーンを形作るには重要な要素である。一定の強さで塗りつぶしたり、単一な線をひくわけではないので、様々な表現が可能となる。
描き込んでいく過程で、生物の動きが止まってしまわないように気をつけなくてはならない。かなりイメージが明確に固まってきたので、今回はうまくいくだろう。
次へ向けて準備しておかなくてはいけないことが結構ある。そろそろエンジンをかけていかないと。
最近、仕事場でのBGVは東京事変「Dynamite out」をヘビーローテーション。もう10回以上流していると思うのだけど、描きながらなのでまだ一度も画像をじっくり見ていない。車のなかではこれです。
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投稿者 corvo : 23:27

2006年7月 7日

Tarbosaurus hunting 02

タルボサウルスの鉛筆デッサンを描いてみる。完成のイメージが持てるところまでいきたいと思い始めたのだけど、どうもしっくりいかない。
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ここまで描き込んできたのだけど、やめることに決定。新しい紙をセットし直す。どうにも動きがない。固まってしまっている。前回、ここで紹介したエスキースが自分の中でしっくり来ていなかったことが大きな原因だ。もう一度、最初から練り直してみる。こんなときは、どんどんペンを走らせる。手を動かす。何枚も何枚も試行錯誤を繰り返す。いい感じのものが出てきた。
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しっくりくる。このスケッチを軸に、細部を詰めていこう。

前回のエントリーで書いた料理人の件なのだけど、あれから色々考えたりネットで他者の意見を読んだりしてみた。僕自身も仕事となると、相当高い集中力で画面に臨むし、張りつめた緊張感を保つことが必要になる。一人でやっているので、全てが自分の責任なるし、誰かに足を引っ張られることもないのだけど、これが大勢いる職場で、しかも自分が責任者であった場合、部下に対して厳しくなるのは当然かもしれない。調理場という戦場で時間に追われながら的確にオーダーをこなし、お客さんに満足してもらえるサービスを供給し続けることは並大抵ではないだろう。ほんの少しのさじ加減、火加減が、秒単位の間違いで、味を台無しにすることもあるだろう。
「盗む」ではなく、もっと「教える」を重視すれば、と書いたが、日々の現場ではそれはとても無理なのかもしれない。教えたくともそんな時間はなく、自分の仕事を精一杯こなしていかなくては、全体がまわっていかない。そんな厳しい現場なのだろうか。授業料をもらってるわけでなく、給料を払って雇っているのであれば、「技を盗め」という気持ちも分かる。
それでも、仕事が出来る人間が増えれば、より質の高いサービスを提供できるのだと思うのだけど。
とにかく僕は聞かれれば、どんなことでも教えたいと思うし、伝えていきたいと思う。ただし、僕に教えたくないとか、企業秘密にしたいことがあったら、全然かまいません。そこは、盗みますから。
いつでも質問してください。待ってます。
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投稿者 corvo : 00:33

2006年7月 6日

小学校で課外授業3

昨日は、NHK恐竜キャラバンの仕事のため、千葉市の小学校で課外授業。午前中の授業時間ということで、朝早くに家を出る。始める前まで、今ひとつ頭の活動が鈍かった。
前回の野田市の時とちがい、今回は小学6年生2クラスへの授業だったので、非常にやりやすかった。少々難しい言葉でも反応してくれるし、60人ちょっとという人数で部屋の大きさもちょうど良く、持ってきた骨格などがよく見える距離だったので、集中力も持続してしっかり話を聞いてくれたようだった。
基本はスライドショーなのだけど、実物の頭骨にはとても興味を示してくれる。いつもと同じように、持っていったのは猫と犬と鰐なのだが、猫と犬はペットとして飼っている子供たちも多く身近に感じられということ、鰐は大型のは虫類の仲間ということが、選んだ理由である。必ず最初に、「何の骨かわかる?」という質問をするのだけど、もっとも正答率が高いのが鰐で、低いのが猫である。これには理由があって、ほ乳類の場合は表情筋が豊かなため、骨と実際の顔がなかなか結びつきにくい。また、特徴的な大きな耳(外耳)がないことも、判断を難しくしている。一方の鰐は表情筋がなく、皮膚をかぶせた状態と骨の状態で、形態にほとんど違いがないため、初めて見る子供たちでも即座に分かるようだ。
この点は復元をする上でも重要な事柄である。
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持ってきた骨コレクションと本の紹介。MacBookも活躍してます。
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今回も原画を展示。
小学生に話す時には、興味を持続してもらう必要もあるし、より噛み砕いて説明しなくてはいけない。僕自身がよく理解していないと、きちんと伝えることができない。これは、とても勉強になる。自分にしか分かっていないことを、どうやって他人に伝えるかということは、全ての表現活動に通じる基本である。ここでは「分かっているでしょ?」は通用しない。
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今日も授業が終わった後、恒例のモリーが登場。ここでも人気者。雨が降っていく分涼しかったのだけど、いつも「中身の人(いないことになっているのだけど)」は大変なことになっている。背中にアイスノンを大量に貼って、しのいでいるらしい。
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最後には握手会も。
授業の後には昼食に給食をいただいた。もう何年ぶりだろう。小学生のとき以来である。素朴な味でたいへんおいしかったです。写真を撮り忘れたのが残念。

先日、ある有名オーナーシェフが、従業員に電話を投げつけ怪我をさせ、傷害罪として訴えられたというニュースがあった。このシェフは子供たちの味覚を鍛えることを目的とした、「食育」という活動を行っており、テレビなどで子供たちに笑顔で接する姿を何度か見たことがある。子供たちに伝えられる言葉を持ちながら、どうして暴力に走ってしまったのか。
実際に経験していないので推測の域を出ないが、料理人の世界の上下関係の厳しさや、体罰が当たり前とされる職場環境が原因としてあるのかもしれない。よほど腹に据えかねての行動だったのいか、単に虫の居所が悪かったのか。原因は仕事が遅いことだったらしいのだけど、当たり前の行動としての暴力なのか、特別なことなのか、僕には判断がつきかねる。
職人の世界では、よく「技を盗む」という表現をするが、僕にはちょっとピンとこない。人から教えられなくても、盗むぐらいの意欲がなければ駄目だという考えは分かる。でも、教えたとして困ることってあるのだろうか。教えた上で、さらに盗むぐらいの意欲があれば、その人間のスキルは飛躍的に向上するのではないだろうか。甘いのかな。やはり「秘伝」でなくてはいけない理由があるのかな。もし、プロの料理人で読んでいる方がいたら、コメントお願いします。
僕はこのblogで制作に関わる情報をかなりオープンにしている。もちろん100%を伝えることは不可能だし、業務上の守秘義務もあるの、全てを書いているわけではない。でも、技術的なことや方法論に関しては、まったくといっていいほど秘密にすることはない。使いこなせるかどうかは、別の問題だからだ。
アカデミズムを権威主義として批判することがあるが、アカデミズムの真の良さは、すべての情報がすべての人に平等にオープンにされていることだ(言語の問題はもちろんあるが)。意欲があれば誰でも学び、吸収することができる。
これからも、質問があればどんどんコメントしてください。出来る限り、答えていきたいと思います。
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ちょっと更新が遅れがちですが、応援よろしくお願いします。

投稿者 corvo : 14:02

2006年7月 4日

Tarbosaurus hunting 01

前回、ポスターのためにタルボサウルスを描いたのだけど、限られた時間の中での制作だったので、満足できる出来とはいかない部分もあった。やはりアジアに生きる人間として、アジアの古生物を描いていくことは自然なことだと思っている。ティラノサウルスは北米のものであるし、どこかお客さんのような意識がついてまわるのである。
これまで僕は、大型のティラノサウルス類は腐肉や死体を漁る動物であると考えていて、拙著「ティラノサウルス」の中でもスカベンジャーの特徴を強く押し出している。しかし、今回は彼らが群れで行動し、身体の軽い亜成体の個体が獲物を追い込み、十分に成熟した個体がとどめを刺すというシーンを想定してみた。
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A3サイズの紙に鉛筆。この構図を見てすぐに気がつく人も多いと思うが、John Gurche の「スー」へのオマージュである。ちょっと成体の足が短すぎるか。大きく入りすぎて広がりにもかけるので、構図はもっと動かしていくつもりである。
締め切りはないので、時間をかけてじっくり描いてみようと思う。
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なかなか順位は安定しませんが、応援よろしくお願いします。

投稿者 corvo : 23:36

忘れてた

7月3日、ジェームス・ダグラス・モリソンの命日でした。
DOORS、好きです。

投稿者 corvo : 02:13

中国語のサイト

ときどきGoogleに自分の名前を入れて検索してみるのだけど、中国語のサイトで復元画が紹介されていることが判明。他にもいろいろなアーティストが紹介されているのだけど、けっこうビッグネームも入っていて、綺麗にデザインされたサイトである。ネット上で画像を掲載している以上、こういったことはしょうがないと思っているのだけど、見る限り趣味の個人サイトではない。
「Copyright© 1998-2006 中国恐龙网 All rights reserved」なんて書かれてもねえ。
そのサイトとはこれ。そして僕のページがこれ。なかなか綺麗に紹介してもらっている。掲載サイズも、僕のサイトとまったく同じようである。目くじらたてて抗議するつもりはないのだけど、ちょっと対応を検討中。どうするかな。
これだけ堂々と綺麗に掲載されていると、清々しくもあります。
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表彰台の頂点を目指して。応援よろしくお願いします。

投稿者 corvo : 00:31

2006年7月 3日

ヌードクロッキー

昨日は久しぶりにヌードクロッキー会に参加してきた。
スケッチブックの日付を見ると前回が1月25日。およそ半年ぶりである。ここのところの風邪の影響で体調も悪く、出かける直前まで行こうかどうしようか迷ったのだけど、いざアトリエにイーゼルを立ててモデルを目の前にすると、「パチン」とスイッチが入る。習慣とは恐ろしいもので、どんな状態でも集中できるようになっているようだ。おかげで描いている間にどんどん体調も良くなってきて、気持ちよく描くことができた。でも、終わったあとは、かなりの疲労感が残るのだけどね。ビールが美味いです。
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カラーインクで色はSaddle Brown。つけペンで描いていく。紙のサイズは65x50cm(木炭紙大)。これぐらい大きいと、ゆったりのびのび描けて気持ちがいい。
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こちらは少し小さくて、51.5x36.4cm(B3サイズ)。
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クロッキーで大事なのは、単純に速く描くことではないが、速く対象を捉える必要がある。そして、人体を紙の中に良い構図で収める訓練にもなる。
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高校で教える時も、必ずクロッキーをするのだけど(もちろん着衣のモデル)、どうしても消しゴムを使ってしまう生徒が多い。これは使うべきではない。自分が間違ったと思った線も残していかなくては、正しい線が描けたときに比較することができない。
定期的にクロッキー会に参加して、腕を錆び付かせないようにしていかなくては。
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順位上がりました。これからも応援、よろしくお願いします。

投稿者 corvo : 20:51

2006年7月 2日

超最新・恐竜ワールド

2日続けてのPK戦決着で夜が遅い(とても午前4時スタートの試合は見られません)。更新が少し開いてしまった。
ちょっと恥ずかしいエントリーのタイトル。以前にこのblogでも紹介した、モノクロイラストが掲載されたムックが完成した。「NHK2006恐竜の夏徹底ガイド 超最新・恐竜ワールド」監修:小林快次、NHK出版。定価1000円(税込み)。発売は7月10日。ということで、今手元にあるのは見本です。
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裏表紙に、うすくT-rexスケルトンが入っている。
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中ではこんな感じに掲載されている。このムックの特筆するべきところは、監修の小林快次さんが音頭をとって、研究者としての一歩を踏出そうとしている学生に執筆の機会を与えているところである。まだ論文にもなっていない、ホットな話題を読むことができる。写真、図版も豊富で資料的価値も高い。
巻頭に番組宣伝のようなページが来ているのはちょっと。出たがりの某プロデューサーの強い意向が反映されているらしい。将来的には、これらは別々の本にまとめたほうが良いだろう。

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今回のムックの担当編集者からお土産をもらう。 MS−06F、嬉しい。関節もよく動くし、ポーズの自由度はかなり高い。

昨晩は編集者と松戸市内の飲み屋でプチ打ち上げ。楽しいひとときでした。
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投稿者 corvo : 12:00