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2006年6月 1日

盗作か、否か。

6月はからっと晴れた一日から始まった。こんな天気にはふさわしくないエントリーなのだけど、コメントでもちょっと触れたので、書いてみる。
広辞苑で「盗作」を引いてみると、「他人の作品の全部または一部を自分のものとして無断で使うこと。剽窃」とある。
今、ちまたで騒がれている日本人画家が、イタリア人画家の絵を盗作したとされている問題である。
ここで画像を並べることは、許可を得てからでないと出来ないし、無断で掲載することは著作権違反になってしまう。実際の原画を見た訳ではないし、仔細に画集などをチェックした訳ではないが、報道されている画像を見る限り、盗作どころか模写にすぎない。
もし、仮に同じモデルを使って、同じ空間で描いたとすれば、ビューポイントが変わってくるはずである。違う視点からの構図にならなくてはおかしい。人物のデフォルメまで同じに見えるので、影響を受けたとか、オマージュであるといったことでもないだろう。例えば、まったく同じ構図で、同じ人数の人物像であっても、まったく違うモデルを使ったり、空間をかえるだけで、新しい作品が生まれる可能性はあるし、それならオマージュであるとも言えるだろう。
今回のケースは、トレースしたようにぴたりと絵が一致してしまう。どう言い逃れをしようとも、模写であるとしか判断できない。贋作に近いと言えるだろうか。
自分の修練のために模写をすることはあるし、過去の巨匠の模写から、まったく新しい作品を作ることもできる。以前、ここで紹介したホルスト・ヤンセンにも、巨匠の模写から独自の作品を作り上げたものが何点もある。
僕自身は、あまり窮屈に考えて、なんでもかんでも盗作だといって、他者からの影響を排除することは反対であるが、今回のことはそんな次元の問題ではない。油絵を描くには、長い時間がかかる。しかも何点も描いている。制作している時間、彼の精神はどういった状態にあったのだろう。誰が見てもあきらかに分かる両者の絵の共通点。画家本人にとって、結果的にメリットのない行為に駆立てたものはなんだったのか。画商から課せられた、厳しいノルマだったのか。
この画家の正直な告白があれば、自分の弱さを省みることで、我々も学ぶところがあるかもしれない。
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投稿者 corvo : 2006年6月 1日 23:35