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2006年4月14日

藤田嗣治展

今日から、非常勤講師の新年度がスタート。毎週、金曜日は都内へ出かけることになる。
授業を終えた帰りに、東京国立近代美術館藤田嗣治展を見に行ってきた。金曜日は、午後8時まで開館しているため、比較的空いた状態でゆったりと観覧することができた。今回は珍しく、会期の前半に見に行くことが出来た。
作品は時系列で並べられている。東京芸大時代の自画像に始まり、パリへ渡って次第に人気作家へと上り詰めていく前半から、第二次大戦中、戦意高揚のための大作を描いた転換期を軸に、再びパリへ戻ってから晩年までの作品を展示した後半へとつながっていく。
前半の展示では、藤田がその独特の技法と、絵の世界を獲得していく過程がよくわかる。もちろん、最初から完成されていたわけではなく、試行錯誤を繰り返し、あの素晴らしい乳白色の画面に鋭く切り裂くように引かれた線と、柔らかな色彩が次第に表出してくる。
帰国後、戦争画を手がけるようになった藤田の画面は一変する。茶褐色に彩られたモノトーンの画面のなかから、血と汗がにじみ出てくるような緊迫した戦闘シーンが描かれている。戦意高揚のための絵画のはずなのに、そこからは戦争の愚かさと悲惨さを強く感じる。これらの大作で、藤田の筆は凄まじい冴えを見せる。卓越した描写力、戦争のあらゆる物を描き出そうとするかのような想像力、大画面に群衆を描ききる構想力。どれもが、見事にバランスしており、きわめて完成度の高い作品である。これらの作品を、藤田の最高傑作のひとつと呼んでも過言ではないだろう。
敗戦後、再びパリに渡り、フランス国籍を取得し、洗礼を受けた藤田。この時代の作品は、戦前のパリ時代に見られた、成功したいと切望する執念のようなものを感じない、優しく落ち着いた画面に見える。それでも筆の冴えは衰えることなく、数々の作品を描き上げていく。個人的には戦争画以降の作品のほうが好きであるし、充実しているように思う。
技術に裏付けられた表現からは、揺るぎない自信と、強固な完成度を感じる。見ていて、非常に心地よい。
その後、常設展を見たのだが、そのほとんどの作品から力強さを感じることはなかった。何点かの戦争画の展示もあったのだけど、技術、表現力、どちらも藤田には遠く及ばない凡作であった。
この展覧会は必見であると思うので、未見の方は是非、竹橋まで足を伸ばしてほしい。良い展覧会です。

帰りの千代田線で、再び「恐竜の科学展」の広告を発見。
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黒バック仕様のポスター。そろそろ会期が迫ってきて、ちょっと焦ってます。
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投稿者 corvo : 2006年4月14日 23:30