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2006年3月 7日

Triceratops skeleton & living body 02

トリケラトプス、大幅に修正である。
昨日の夜、 blogでも少し触れた知人の大学院生にメールで画像を送り、気になるところをチェックしてもらった。
結論から言うと、ほとんど全てにといっても良いほどである。彼は 藤原慎一君という、東京大学大学院の学生で、角竜を中心に恐竜の機能形態について研究をしている。おそらく、日本でもっともトリケラトプスの標本を、詳細に見ている人間かもしれない。
blog06030702.jpg
今日、修正版を朝から制作。途中で気に入らなくなり、午後からもう一枚描き直す。

まず、全体についてのコメント。
「1.全体のバランス

頭、もすこし大きく。胴、もすこし前後に短く。頭の長さとribcage(胸郭)
の長さがほとんど同じくらいに見えるような感じ・・・なんとなく、遠近感のせい
でしょうか、頭が小さく見えます。
 前肢、もすこしごつく。後肢、もすこし短く。大腿骨と肩甲烏口骨の長さはほ
ぼ同じく100 cmなんで(レイモンド)、まぁ・・・これも斜め前から見てるから短
く見えてしまっただけかもしれません。
 たしか、一昨年のSVPで、尾椎の傾きをもっと下方に傾けている方が正しいと
する説も出てきましたね。割と納得しています。小田さんの第一案の方がしっく
りくるかもしれません。仙椎の一番後ろは、結構下の方に曲がっているんです。」

「レイモンド」というのは、国立科学博物館に収蔵されている、右半身が関節したトリケラトプスの標本の通称である。
各部についてのコメントも的確でわかりやすい。以下、その抜粋。

「2.胴体の形状

 左腸骨は腹側の面が見えている状態ですよね? コレの背側面が水平であった
としたらば(鎧竜みたく)・・・一番後ろの肋骨は真横に伸びます(横に3伸びて、
下に1下りるカンジです)。従って、恥骨ももう少し上の方に着くことになるで
しょう。腸骨と恥骨の角度はもう少し狭くなるということです。(中略)
 肋骨全体のカーブ具合は・・・後でまとめて添付ファイルで画像を送ります。
 ちなみに、仙椎に取り込まれた胴椎もいくつかあると思われます。その肋骨の
名残が、腸骨の前端と一番前の仙椎との間に見られます。
 肋骨の数・・・頸椎9個、胴椎12個、仙椎10個とされています。肋骨は頸椎の7番
目から少し長く伸びてきて、8、9(レイモンド全身骨格のpr8, pr9)になると胴
椎の肋骨とほとんど同じ長さになります。従って、見た目の肋骨の数は15個くら
いになるのでは? 
 胴椎の神経弓、特に腸骨の前から肩甲骨のあたりまで、骨化した腱が発達して
います。これは描かれますか?
 (中略)「Ostrom and Wellnhofer (1986): The Munich specimen of Triceratops
with a reversion of the genus. Zitteliana 14: 111-158.」がいいかと思います。
もっと直接的な資料としては、「恐竜学最前線Vol. 10」の4、5ページの見開きがい
いかと思います。

肋骨の角度、カーブの形状など、あと数も間違っていた。焦るとよくない。骨の数をカウントし、計測しながら制作するのだけど、焦りから仕事が雑になることがある。それ以上に、理解が足りなかったということもあるのだけど、このコメントでかなりイメージがスムーズに出来上がってきた。

「3.前肢
 
 肩甲骨の位置。おそらく、レイモンドは肩が本来の位置から若干(肋骨ひとつ
分)ズレてますね。他の関節標本を見ると、肩甲骨の一番近位(一番後ろ端)は
私が第13仙前椎「p13」としてある椎体のあたりに来ます。しかも、その近位端
は肋骨の一番上の辺りにくるのでは? ここは、そのあたりの神経棘と菱形筋に
よって結ばれているはずなので、現生の四足歩行動物でもその傾向はわりとでて
いるはずです(レアとかエミュとかが例外・・・私の悩みの種です。今度解剖して
じっくり観る予定)。
 結果、左右の肩甲烏口骨の位置はもう少し首を絞めるようなカンジで上に移動
することになるのでは? 左右の烏口骨、くっつけちゃってもいいかもしれませ
ん。肩甲骨と烏口骨の境界にある肩関節(glenoid)の位置は、肋骨よりもずっ
と前の方にあるはずです。ワニとか鳥でもそうですね。
(中略)結果的に、頭の位置がもう少し下がることになるかもしれません。
 手に関して、ほとんど言うことはありません。ありがとうございます。ひとつ
だけ・・・小指(第5指)は後ろに飛び出させてほしいのです。撓・尺骨の長さだけ
だと、第1指から第4指までで占拠できてしまう長さですので、第5指が手首関節
に収まる余地がないんです。これは、鳥脚類にもあてはまることですね(例:ハ
ドロサウルス類、ヒプシロフォドン類)。ワニの手をイメージしていただけると
いいかもしれません。(中略)
 上腕骨の形状が少し気になります・・・。関節する骨頭の位置が違うんでは? 」

上腕骨をもっと観察しなくては。絵に合わせた角度の写真を撮ってくるか、画像を送ってもらわねば。
肩甲烏口骨の位置が、四足歩行の恐竜の復元で、いつも悩みどころである。この位置の決定には、いつも頭を悩ます。

といった感じのやりとりをしながら、進めている。もっと時間があって、トリケラトプスだけを復元するのなら、もっと突っ込んだ議論と多くのスケッチが必要になってくるのだけど、とてもそこまではコストをかけられない状況にある。それでも、丁寧なコメントや、資料を送ってくれる藤原君に、とても感謝している。
blog06030701.jpg
これが修正版。椎体と肋骨はペン入れしてある。
今、この画像を送り、コメントを待っているところである。明日には、着彩の骨格図まで進めてしまいたい。

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投稿者 corvo : 2006年3月 7日 18:06