« 美術の授業2 | メイン | F1最終戦、上海GP »

2005年10月16日

ニッポン・ヴンダーカマー 荒俣宏の驚異宝物館

今日は群馬県立自然史博物館へ妻と出かけた。天気予報では雨が上がる予報だったのだけど、出かける時はちょうど土砂降り。群馬に近づくにつれて、雨があがっていった。
今日の目的は企画展「ニッポン・ヴンダーカマー 荒俣宏の驚異宝物館」を見ることと、日本大学藝術学部教授である木村政司先生の講演会を聞くためである。
展覧会、講演会ともに非常に面白く、興味深い内容であった。
木村先生は日本におけるサイエンティフィック・イラストレーションの第一人者である。その昆虫画は精確で美しい。昆虫の研究者との綿密なコミュニケーションから生み出される画像は、その生物の存在した証拠として残されていく。極めて公的な目的も持っているのである。
写真は対象を正確に写すことができるが、余分なものが写ってしまったり、本当に知りたい情報が欠けてしまう。人間が眼で見て、脳で情報を整理し、手を使って描くことで、その生物の真実の姿により近づくことが出来る。
よく写真のような描写と言われることがあるが、このような目的を持って描かれたものは、写真を超えることができるのである。
blog05101601.jpg
写真は木村先生の講演会の様子である。ちょうどスライドに映っている画像は、Ernst Haeckelの描いた有孔虫のイラストレーションである。極めて美しい画面であり、精確な生物の記録である。ただひたすらに目の前の対象を精確に描く行為が、「美」という力を持って立ち上がってくる。

次の画像は企画展の様子。まさにごった煮といってもいい空間である。木村先生はこの展覧会の仕掛け人でもあり、彼の教え子たちが中心になって展示空間を創り上げた。またタイトルに冠のようについている「荒俣宏」氏は現在、日大藝術学部の大学院の教授であり、この学生たちのもう一人の指導教官である。
blog05101603.jpg
この展示の面白さを画像や言葉で伝えることは難しい。遠方ではあるが、是非実際に見てもらいたい空間である。
気持ち悪い物や、苦手なものがある人も多いだろう。実際に僕の妻は昆虫が駄目で、木村先生のイラストレーションも大量の標本も正視することができない。
でも、これだけのバリエーションがあれば、きっと何か引っかかるものがあるのではないだろうか。こんな展示から何かに興味を持って、深く追求したいと思うものが出てくるかもしれない。
博物館に常設してほしい空間のひとつだ。
blog05101602.jpg
ここに展示された博物画は、おそらくエッチングに手彩色されたものと思われる。全て荒俣宏氏のコレクションである。(画像の一部に木村先生の昆虫画も写っています。これらは荒俣氏のコレクションではありません)
エッチングの精緻な線で描かれた羽根の毛の一筋一筋が、息を飲むほどに美しい。構造が手に取るように分かる。写真ではこうはいかない。やはり手で描かれた強さがある。

大変充実した一日であった。お薦めの展覧会である。
期間は11月27日まで。来月13日には荒俣宏氏の講演会が開催される。

話はかわりますが、今朝ボローニャへイラストをEMSで発送しました。31日必着。まずは無事に届くことを願って!


投稿者 corvo : 2005年10月16日 22:08